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一覧表
大野山
富士山あれこれ 3
1 胡椒が
入っていない
2 トウガラシ
は何処から
3 九州で胡椒
南蛮胡椒から
4 江戸でたうがらし
「同音衝突」で敗北
5 トウガラシの名称
1630年-1868年
6 トウガラシの名称
1868年-2022年
7 トウガラシの名称
白芥・・・番椒
8 トウガラシの名称
唐芥子・・・唐辛子
9 トウガラシの図
源内・・・伊藤圭介
10 トウガラシの史料
トウガラシ伝来等
3 トウガラシの名称 九州では胡椒
(1)トウガラシの名称
前のぺr-ジに出てきたトウガラシ伝来史料の題簽書名:諸国方言物類称呼 (1775年)
、成形図説巻(1804年)
に、トウガラシの各地方の呼び名があるので下表にまとめた。また、トウガラシの漢字、読み方については全伝来史料についてまとめた。
トウガラシの史料では、名称は漢字は番椒で読み方はトウガラシ、トウカラシ、タウカラシで、漢字はその他辣茄
、登宇加良志、唐辛子、
唐芥
、白芥が使われている。別名として南蛮がらしがある。
江戸では、番椒(トウガラシ)が定着していたと思われる。
(1712年)寺島良安編纂『和漢三才図会』等。
番椒(トウガラシ) 南蛮人によってタバコと同時に渡来した、そのため南蛮胡椒という。現在、江戸では、番椒、唐芥子という。
朝鮮、南蛮からの伝来から170年後の1775年には、 「高麗胡椒」、「南蕃胡椒」の省略形の「胡椒」と「何蕃」が主流の呼び方になっている。
胡椒:九州、西國及び奥の仙臺、(奈良)
南蕃:東北圀、上總(千葉県中部)
及参遠
地方名
トウガラシの呼称
史料名
朝鮮からの伝来時
(1592年)
高麗胡椒
大和本草(1709年
)
蕃國からの伝来時
(1596 ~1614年)
南蕃胡椒
和漢三才図会』(1712年)
史料中の表示
番椒(トウガラシ)、番椒(タウカラシ)、辣茄(トウカラシ)
登宇加良志(トウカラシ) 唐辛子(たうがらし)、
唐芥子
唐芥(トウカラシ)
、
白芥(タウカラシ、コウライコセウ)
、
南蛮がらし
、
唐菘
(タウカラシ)
全史料
(奈良)
コセウ
多聞院日記(1593年)
京
かうらいごせう
諸国方言物類称呼 (1775年)
西國及び奥の仙臺
こせう
諸国方言物類称呼 (1775年)
出羽 (山形・秋田県)
とこぼし
諸国方言物類称呼 (1775年)
奥羽 (東北地方)
なんばん
諸国方言物類称呼 (1775年)
上總(千葉県中部)
及参遠
なんばん
諸国方言物類称呼 (1775年)
越前
まずものこなし(隠語)
諸国方言物類称呼 (1775年)
東北圀
南蕃
成形図説
(1804年)
九州
胡椒
成形図説
(1804年)
*東国にて眞の胡椒のみ「こせう」という
諸国方言物類称呼 (1775年)、 <対州編年略(1723年)
*
「とこぼし
」、
「まずものこなし」は現在使われていないようです。Google検索で、唯一
トウガラシ - e食材辞典
のサイトでトウガラシの別名として出てきます。
奈良で「コセウ」は次の史料から。伝来時の一時的な呼称ともとれる。
奈良でコセウ
奈良の寺院 『多聞院日記』の1593年のところに 「辛 き事無類」とした胡椴の記述がみられる。すなわち、以下の如 くである。
「コセウノタネ尊識房ヨリ来。茄子タネウエル時分二植 トアル間今日植了。茄子種ノ様二少ク平キ也。惣ノ皮アカキ袋也。其内ニタネ数多在之。赤皮ノカラサ消肝了。コセウノ味ニテモ無之。辛キ事無類。」
ここにみえる 「胡椴」の種子の形の説明から、この植物が トウガラシであることが推定される
高橋, 保「アジアを中心としたトウガラシの生産と伝播の史的考察」
よりi引用
多聞院日記. 第4巻 199/249- 国立国会図書館デジタルコレクション
より引用
(2)何故、九州で「胡椒」
「成形図説」(1804年)に「唐芥(トウカラシ) 即番椒也、・・・九州にて胡椒とのみいふ、胡椒は即蕃地よりいづる蔓艸の実して味辛し、故に此者の辛よりその名を借用るなり」とあり、初めはじめから「胡椒」と呼ばれていたような記述です。
しかし、九州はトウガラシ伝来の入り口ですから、他の史料にあるように伝来時は「南蕃胡椒」、「高麗胡椒」と言われていたと思います。
それが1804年には前部の「南蕃」、高麗」が省略されて「胡椒」になっています。
その頃には本来の「胡椒」が九州にもあったのに、なぜ同じ名前の「胡椒」になったのか、とても不可解です。
しかし、上記した史料には単に前部が省略されて「胡椒」になったというだけで、これについての適切な説明が有りません。現代の資料にもその説明はありません。
そのため、これについて検討します。
「胡椒」はトウガラシが伝来する前の奈良時代から輸入されており一般に使われていました。
胡椒の伝来と普及
コショウは奈良時代以降も断続的に輸入され、平安時代には調味料としても利用されるようになり、江戸時代にはうどんの薬味や胡椒飯として用いられていた。
トウガラシ (唐辛子) が伝来する以前には、日本ではコショウは山椒と並ぶ香辛料として現在より多くの料理で利用されており、上記のようにうどんの薬味としても用いられていた。江戸期を通じて (1641–1832年) 唐船を通じて平均して年間5.7トン、オランダ船を通じて1638年の記録では78トンのコショウを輸入していた。現在でも、船場汁、潮汁、沢煮椀などの吸い物類を中心に、薬味としてコショウを用いる日本料理は残存している (「胡椒茶漬け」という料理があったという記録もある)
コショウ - Wikipedia
よりi引用
古代・中世のヨーロッパで、胡椒はとても貴重で、同じ重さの金や銀と取引されていたと思っていましたが、実際はそれほどまでに高価ではなく、さらに1644年の長崎では金1g=胡椒3600g、銀1g=胡椒300gとなっております。胡椒は高価なため庶民が使えない調味料ではなかったようです。
胡椒の値段
●ローマ帝国
金1g=黒胡椒262g、白胡椒150g、長胡椒70g 銀1g=黒胡椒21g、白胡椒12g、長胡椒5.6g
●中世フランス
金1g=胡椒72g、銀1g=胡椒6g
●近世イギリス
金1g=胡椒236g、銀1g=胡椒19g
●長崎貿易 1644年
金1g=胡椒3600g、銀1g=胡椒300g
日本は生産地に近いことや、胡椒がさほど必需品ではなかったためか、ヨーロッパに比べるとずいぶん安価です。
胡椒の値段
よりi引用
何故、従来の調味料の「胡椒」があるのに、「南蛮胡椒」から「南蛮」が消えて「胡椒」になったかを、根拠なしに推察します。
①)江戸時代初期の頃、九州ではうどんに胡椒をかける流行はなく、胡椒の使用が殆どなく一般化していなかった。そのため、「胡椒」といえば、「南蛮胡椒」を示すようになった。
②柚子胡椒」を作り名前を付けるときに「柚子南蛮胡椒」では長すぎる。日本人は省略名称を好むため、南蛮が消えて「柚子胡椒」になった。「柚子胡椒」が一般化すると、本体の「南蛮胡椒」からも南蛮が消えて「胡椒」になった。柚子胡椒がいつ頃から作られたかは不明。
③九州では「本来の胡椒」と「南蛮胡椒」両方を「胡椒」と呼ぶようになった。その場でどちらか判断できないときは、「江戸胡椒」、「本来胡椒」とか言って区別した。そのうち、本来の胡椒は「洋胡椒」と呼ぶようになった。
また、江戸の方で「南蛮胡椒」が「番椒(トウガラシ、唐辛子)」となり、全国に広がってきても九州では「胡椒」と呼んだ。
その理由として、「唐辛子・トウガラシ」が「唐枯らし」となるため、外国(唐土)との交易で潤っていた九州では「トウガラシ」は使われなかったという説がある。
トウガラシは唐枯し
「長崎にて蕃椒を胡椒と唱え、トウガラシは唐を枯しといふ同音なれば必ず胡椒といふ、長崎の地役人共唐船の為に扶助せらるるなれば、唐国を尊み敬ふ事如此」
国際日本文化研究センター | 古事類苑画像検索システム「蕃椒」
の「内安録」よりi引用
諸国方言物類称呼 (1775年)に「東国にて眞の胡椒のみ「こせう」という」とあるので、東国以外ではなんと呼ばれていたか気にかかり、
国際日本文化研究センター | 古事類苑画像検索システム 「胡椒」
で調べましたが、其の事に関する史料はありませんでした。
(3)九州以外で「トウガラシ」を「胡椒」と呼ぶ地域
現在、」トウガラシを「胡椒」と呼ぶ地域は、、「九州の全域そして山陰、中部、東北南部に点々と 「コショー」の類が分布する。「コショー」は 「胡槻」であって、やはり 「高麗胡椴」ないし 「南蛮胡概」の前部が省略されたものと考えられる」『日本の方言地図』(徳川宗賢編 中央公論社、1979年より)
赤、緑を問わず唐辛子を「なんばん」と呼ぶ地域はどこか。九州の「柚子こしょう」のように唐辛子を「こしょう」と呼ぶ地域はどこか。下記のサイトにその調査結果があります。
北は「なんばん」南は「こしょう」 唐辛子の呼び方|NIKKEI STYLE
そのため、岐阜県に行き、中津川ご当地グルメのあじめ胡椒入り「あじめカレー」を食べると、次の様になります
岐阜県中津川市福岡地区では約400年前からトウガラシは胡椒です。
岐阜県中津川市福岡地区 胡椒は唐辛子
風味に優れる特徴を活かした加工品が人気
「あじめコショウ」は岐阜県中津川市福岡地区で、約400年前から栽培される野菜です。コショウと名が付いていますが、この地域ではトウガラシをコショウと呼んでいて、トウガラシの一種です。一方、「あじめ」については諸説ありますが、地域内を流れる付知川に生息するアジメドジョウに外観形状が似ていることから、アジメドジョウに似たコショウ(トウガラシ)として、「あじめコショウ」と呼ばれるようになりました
あじめコショウ -その辛さが人を呼び、地域を元気にするトウガラシ在来種|注目の農業技術|みんなの農業広場
よりi引用
岐阜県郡上地方で売られている「葉なんばん(激辛)」は唐辛子の佃煮です。岐阜県では、「南番胡椒」は「胡椒」と「なんばん」に変わったようです。
葉なんばん(激辛)
(なんばん)とは郡上地方の方言で(唐辛子)
新潟上越伝統野菜の一つとして「かぐらなんばん」こと「オニゴショウ」はピーマンよりひとまわり小さく丸く太った唐辛子で、上越では7月中旬からお盆時期が最盛期でスーパーや市場の店頭に並ぶ定番野菜です。
上越伝統野菜調味料!鬼胡椒を通販・取り寄せは【上越特産市場】 (joetsu-tokusan.jp)
よりi引用
新潟上越のピリ辛おかずみそ「鬼胡椒」を食べると、次の様になります
上越伝統野菜「オニゴショウ」は唐辛子
新潟上越伝統野菜の一つとして「かぐらなんばん」こと「オニゴショウ」はピーマンよりひとまわり小さく丸く太った唐辛子で、上越では7月中旬からお盆時期が最盛期でスーパーや市場の店頭に並ぶ定番野菜です。
上越伝統野菜調味料!鬼胡椒を通販・取り寄せは【上越特産市場】 (joetsu-tokusan.jp)
よりi引用
「鬼胡椒」は「かぐらなんばん」とも呼ばれる新潟上越の伝統野菜です。この地方では、「南番胡椒は」は「胡椒」と「なんばん」に変わったようです。
信州の「ぼたん胡椒醤油漬け」を食べると、次の様になります
信州伝統野菜「ぼたんショウ」は唐辛子
< みなさま、こしょう(または南蛮)とよばれる食べ物をご存知でしょうか。俗に言う「唐辛子」のことですが、信州ではよく「こしょう」とか「南蛮」と呼んでいます。
そのこしょうが、昔から伝統的に受け継がれてきました。信州では「こしょう」の生産地が多くあり、「そら南蛮」「ひしの南蛮」「ぼたんこしょう」「ししこしょう」は信州の伝統野菜として認定されており、「おいしい信州ふーど(風土)」としても認定されています。
ぼたんこしょうの話。 | 信州を食べよう
よりi引用
信州長野県でも、「南番胡椒は」は「胡椒」と「なんばん」に変わったようです。
「かぶらなんばん」こと「鬼胡椒は」は「ぼたんこしょう」と見た目も味もそっくりのようで、親戚同志と確認されたようです。
山古志特産、かぐら南蛮の魅力に迫る! – #山古志
より
上記のトウガラシ在来品種についての種類、保存と利用については、下記論文があります。
松島憲一「トウガラシ在来品種を用いた研究動向と遺伝資源としての保全と利用」
柳田國男も蕃椒(ばんしょう)、トウガラシ、コショウ、ナンバンについて書いています。ここでは蕃椒を(ばんしょう)と呼んでいます。
この中で「コウレエグス、すなわち高麗こうらい胡椒」が出てきますが、「コーレーグス」は唐辛子を意味する沖縄方言です。また、島とうがらしを泡盛に漬け込んだ沖縄県の調味料です。
蕃椒をコショウと呼ぶ地域は存外に弘い。<鳥取のコショウは?
テントコ 鳥取県の中津山村では、胡椒(こしょう)をテントコといっている。この地でコショウというのは蕃椒(ばんしょう)すなわちトウガラシのことである。蕃椒をコショウと呼ぶ地域は存外に弘い。中部地方では木曾・信濃二川の流域、京都附近にも飛び飛びに痕跡がある。九州はだいたいにトウガラシをコショウという地域であり、その南部にはコウレエグス、すなわち高麗胡椒の名がある。その他の地方では東海道の一部から北陸・奥羽の全体にわたって、ナンバンまたはナンバがあの赤い蕃椒のことである。トウガラシという地域は、全国の五分の二にも足りない。
柳田國男 食料名彙 (3/4あたり)-青空文庫
よりi引用。
野菜のこしょう とは??? | 旦那のいぬうちに・・・
参照
(4)仙台は「胡椒」か「南蛮」か
下記史料で、「トウガラシ」を東北国は「なんばん」であるが「奥の仙臺」は「こせう」と呼ぶとある。「奥の仙臺」が「奥羽(現在の東北)の仙台」とすると、仙台では「トウガラシ」を「こせう」と呼んでいたことになる。
諸国方言物類称呼 (1775年)で『西國及び奥の仙臺にて「こせう」という』、『奥羽のうちにても「なんばん」と称する所もあり』
成形図説(1804年)に『東北圀にてはただ「南蕃」とのみいひ
』
仙台に行かないでネットで調べる。仙台の名物「牛タン」には「みそ南蛮」が付く。
「このみそ南蛮は、味噌と唐辛子で作ります。東北地方では唐辛子のことを南蛮といいます。」と書いてあります。仙台では「トウガラシ」を「コセウ」とは呼んでいないようです。
または「奥の仙臺」は東北の仙台ではないか。
仙台のみそ南蛮は唐辛子と味噌で作る
仙台みそ南蛮
よりi引用
(4)日本のトウガラシ在来品種
日本各地でビックリしないために、現在のトウガラシ在来分布を示します。
①唐辛子②ナンバン③胡椒が三つ巴の領地合戦を行っています。
信州ではナンバンと胡椒の激戦地です。
日本のトウガラシ在来品種
トウガラシの世界とその多様性-公益財団法人日本特産農産物協会
より引用
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4 江戸でたうがらし「同音衝突」で敗北
1 胡椒が
入っていない
2 トウガラシ
は何処から
3 九州で胡椒
南蛮胡椒から
4 江戸でたうがらし
「同音衝突」で敗北
5 トウガラシの名称
1630年-1868年
6 トウガラシの名称
1868年-2022年
7 トウガラシの名称
白芥・・・番椒
8 トウガラシの名称
唐芥子・・・唐辛子
9 トウガラシの図
源内・・・伊藤圭介
10 トウガラシの史料
トウガラシ伝来等