大野山の「柚子胡椒」に胡椒が入っていない











6 トウガラシの名称 1868年-2022年(明治-大正-昭和-平成-令和)



(4)1868年(明治元年)-1945年(昭和20年)のトウガラシの名称


明治、大正、昭和の戦前まで草本書、植物図鑑では、殆ど「たうがらし(蕃椒)
 1907年(明治40年)刊の田功太郎佐藤礼介 『 外実用植物図説』で「たうがらし(蕃椒)」
 1925年(大正14年)刊の村越三千男 編「大植物図鑑」で「タウガラシ(蕃椒)」
 1940年(昭和16年)刊の牧野富太郎著「日本植物図鑑」「たうがらし(番椒・辣椒)」


植物関連の専門書が 蕃椒(たうがらし)を使っているので、園芸、野菜栽培等の本は戦前1948年まで 蕃椒(たうがらし)を使っています。
 1910年(明治43年)柘植六郎著「実験蔬菜園芸新書」で蕃椒 (たうがらし)」
 1940年(昭和20年)の満洲]国立開拓指導員訓練所 編「北満に於ける蔬菜栽培法」で蕃椒 (たうがらし)」

1889-1891年(明治22-24年)刊の大槻文彦 編「言海 」: 日本初の近代的国語辞典で「たうがらし(唐辛)」、「ばんせう(蕃椒)」
 「唐辛」が初めて出てきました。何故、「唐芥」、「唐芥子」、「唐辛子」でなく、「唐辛」かは不明。
 1907年明治40年の金沢庄三郎 著「辞林」三省堂出版でも「たうがらし(唐辛)」、「ばんせう(蕃椒)」


文芸作品での「トウガラシ」の名称。

 「ふりがな文庫」で調査。ふりがな文庫は主として「あおぞら文庫」を使用しているため、著作権が切れた作品が主です。
 著作権は作者の死後70年まで。そのため戦後の作品は殆どありません。

 1889年(明治22年)幸田露伴著「風流仏」で「唐辛子(とうがらし)」、明治の文学作品で「唐辛子」が初めて登場します。
 芭蕉の「青くてもあるべきものを唐辛子」から196年ぶりに唐辛子が出てきました

 1891-1902年(明治24-35年)の正岡子規 著「寒山落木 」で、「唐辛子」がある俳句24句作成。(「ふりがな文庫」ではない)
 この後文芸作品で「唐辛子とうがらし」表記が多くなる。」

 夏目漱石(1867~ 1916)は、1908年(明治41年)「三四郎」、1909年「満韓ところどころ」、1912年「彼岸過迄」1815年「道草」で
 唐辛子(とうがらし)を使っています。他の表記は使っていません。


 森鴎外は1916年(大正5年)刊「渋江抽斎」唐芥子(とうがらし)、「世阿弥の手紙」で蕃椒(たうがらし)と二通りの表記をしています。

 ふりがな文庫で調べた文芸作品の表記
  唐辛子(とうがらし)29作品、唐辛子(たうがらし)12作品
  唐辛(とうがらし)17作品、唐辛(たうがらし)10作品、
  蕃椒(とうがらし)11作品、蕃椒(たうがらし)4作品、蕃椒(ばんしょう)1作品、
  唐芥子(とうがらし)1作品
  番椒は無し。唐がらしはなし、漢字と平仮名を拭くため検索条件から外れたか。

幸田露伴著「風流仏」で「唐辛子(とうがらし)」が使われる前に庶民向け書物で唐辛子が使われています。その後も多く使われています。
 1879年(明治12年)刊の「歌舞伎新報
 1882年(明治15年)刊の岡本経朝編「面白奇聞話のたね: 11至15號」
 




■1879年(明治12年)刊の「歌舞伎新報」




「歌舞伎新報」  1879年(明治12年)

「唐辛子(とうがらし)」





伏見唐辛子がいつ頃から「唐辛子」を使っているかは不明


  
歌舞伎新報―唐辛子




  
 

1879年(明治12年)から1897年(明治30年)まで刊行されていた歌舞伎雑誌。江戸時代以来の評判記や狂言本の流れを受け継ぎながら、近代的な雑誌としての体裁を整えてゆき、「演劇雑誌の祖」や「近代演劇雑誌の嚆矢」[2]などと評価されている。

歌舞伎新報 - Google Booksより引用




■1882年(明治15年)刊の岡本経朝編「面白奇聞話のたね: 11至15號」



岡本経朝編面白奇聞話のたね: 11至15號」  1882年(明治15年)
目録

「唐辛子(とうがらし)」

岡本経朝編   発行元:万字堂(東京)



>


  

面白奇聞話のたね: 11至15號―唐辛子

面白奇聞話のたね - Google Booksより引用




■1889年(明治22年)刊の原在泉著「在泉習画帖」




原在泉著「在泉習画帖」  1889年(明治22年)
目録

「番椒(タウガラシ)」

番椒
  
原在泉著「在泉習画帖」:明治13年京都府画学校教授

出版』京都


在泉習画帖4, 25/36- 国立国会図書館デジタルコレクション より引用




■1889-1891年(明治22-24年)刊の大槻文彦 編「言海 」: 日本初の近代的国語辞典

「唐辛」が国語辞典に採用されました。何故、「唐芥」、「唐芥子」、「唐辛子」でなく、「唐辛」かは不明。です



大槻文彦 編「言海 」: 日本辞書  1889-1891年(明治22-24年)

たうがらし 唐辛

ばんせう 蕃椒

何故、「唐芥」、「唐芥子」、「唐辛子」でなく、「唐辛」かは不明。


  

  大槻文彦 編「言海 」: 日本辞書  1889-1891年(明治22-24年) たうがらし

言海 : 日本辞書. 第1-4冊 370/644- 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)より引用<




■1889年(明治22年)の幸田露伴著編「風流仏」

明治の文学作品で「唐辛子」が初めて登場します。芭蕉の「青くても有るべきものを唐辛子」から196年ぶりに唐辛子が出てきました



幸田露伴著編「風流仏」  1889年(明治22年)

足袋二枚はきて藁沓の爪先に唐辛子(とうがらし)三四本足を焼ぬ為押し入れ、毛皮の手甲して若もの時の助けに足橇まで脊中に用意、充分してさえ此大吹雪、容易の事にあらず、吼立る天津風

*明治の文学作品で「唐辛子」が初めて登場

 
 唐辛子

 
とうがらし
 
唐辛子(とうがらし)”の例文|ふりがな文庫より引用




■1891-1902年(明治24-35年)正岡子規の俳句

「寒山落木 」で、「唐辛子」がある俳句24句作成。この後文芸作品で「唐辛子」表記が多くなる。


正岡子規の俳句  1891-1902年(明治24-35年)
寒山落木 1-5. 正岡子規 著 出版者[正岡子規自筆] 

・明治24年 何の思ひ内にあればや蕃椒

・明治25年 頓入や納屋をあくれば唐辛子
        
・明治25年 あき家に一畝赤し唐からし

1891年-1902年の俳句で使われた「トウガラシ」の表記

唐辛子 :24
蕃椒  :18
唐からし: 2

  
    
自筆の画像で確認。出版年月日1885-1896年

正岡 子規(正岡 常規)(まさおか しき)、1867年〈慶応3年〉 - 1902年〈明治35年〉は、日本の俳人、歌人、国語学研究家。
やがて病に臥しつつ『病牀六尺』を書いたが、これは少しの感傷も暗い影もなく、死に臨んだ自身の肉体と精神を客観視し写生した優れた人生記録として、現在まで読まれている。

寒山落木 1-5. [1] - 国立国会図書館デジタルコレクションより引用






■1900年(明治32年)「婦人衞生雑誌 - 第 131~140 号」


1980-1945年多くの書物で「唐辛子」が使われています」


「婦人衞生雑誌 - 第 131~140 号」  1900年(明治32年)
唐辛子

唐辛子

婦人衞生雑誌 - Google Books
より引用




■1900年(明治32年)の井上頼圀 ・ 近藤瓶城 編 「俚言集覧




井上頼圀 ・ 近藤瓶城 編俚言集覧  1900年(明治32年)
 唐がらし


「物類称呼」で説明
俚言集覧

江戸時代に、主として俗語・俗諺などを集め、五十音の横の段の順序に配列して語釈を加えたもので、明治33年(1900)に、 井上頼圀 ・ 近藤瓶城 が現行の五十音順に改編、増補して「増補俚言集覧」3冊として刊行。




俚言集覧. 中巻 明治32 こ−に 269/446- 国立国会図書館デジタルコレクションより引用




■1902年(明治35年)の尾崎紅葉著 「金色夜叉 」  



尾崎紅葉著 「金色夜叉 (新字旧仮名) 」  1902年(明治35年)
衿巻掻除けて彼の撫でたる鼻は朱に染みて、西洋蕃椒(たうがらし)の熟えたるに異らず。

 
蕃椒


  
たうがらし
 
f蕃椒(たうがらし)”の例文|ふりがな文庫より引用




■1903年(明治36年)刊の村井弦斎著「食道楽:春の巻 (新字新仮名) 」  



村井弦斎著「食道楽:春の巻 (新字新仮名) 」  1902年(明治35年)
また唐辛(とうがらし)一つと昆布とを一緒に入れ長く湯煮ても唐辛で竹の子のエガ味がとれますし、昆布で竹の子が柔になります。

 
 唐辛

とうがらし

 
“唐辛(とうがらし)”の例文|ふりがな文庫




■1906年(明治39年)の島崎藤村著 「破戒 」  



島崎藤村著 「破戒 (新字旧仮名) 」  1902年(明治35年)
入口の壁の上に貼付けたものは、克く北信の地方に見かける御札で、烏の群れて居る光景を表してある。土壁には大根の乾葉、唐辛(たうがらし)なぞを懸け、粗末な葦簾の雪がこひもしてあつた。
 
 唐辛

たうがらし

 
“唐辛(たうがらし)”の例文|ふりがな文庫より引用



■1907年明治40年の金沢庄三郎 著「辞林」三省堂出版




金沢庄三郎 著「辞林」三省堂出版  1907年(明治40年)

たうがらし 唐辛        (蕃椒)

ばんせう 蕃椒

明治時代の辞書は二つとも「唐辛」


     
 

    

辞林 - 国立国会図書館デジタルコレクション
辞林 - 国立国会図書館デジタルコレクション より引用




■1907年(明治40年)刊の田功太郎佐藤礼介 「外実用植物図説」 



田功太郎佐藤礼介 「外実用植物図説」 1907年(明治40年)

「たうがらし (漢)蕃椒」


 
 

大日本図書出版
 
大日本図書出版。この 図説は 「中等及初等程度 ニ於 ケル植物学 ノ参考用 トシテ,又 実業家 ト植物学 ノ一般研究者 トノ参考用」を 目的 として,教 科書 にでて くる植物,山 野 に普通な植物,有用な栽培植物 を併せ1,033種 を,和 名の アイ ウエ オ順に配列 し,1ペ ー ジに2種 ずつ と解 をのせてい る。

内外実用植物図説 - 国立国会図書館デジタルコレクションより引用




■1908年(明治41年)刊の夏目漱石著「三四郎」 



夏目漱石著「三四郎」1908年(明治41年)

向こうに藁屋根がある。屋根の下が一面に赤い。近寄って見ると、唐辛子(とうがらし)を干したのであった。女はこの赤いものが、唐辛子であると見分けのつくところまで来て留まった。

 
 
 唐辛子


 
とうがらし
 

“唐辛子(とうがらし)”の例文|ふりがな文庫より引用

 
夏目漱石(1867~ 1916)は、1909年「満韓ところどころ」、1912年「彼岸過迄」1815年「道草」で唐辛子(とうがらし)を使っています。他の表記を使っていません。友人である正岡子規の影響と推察します。

その他、27作品が唐辛子(とうがらし)と表記しています。
大菩薩峠:鈴慕の巻/ 中里介山、夜明け前・第二部下/ 島崎藤村、妻/ 斎藤茂吉、宮本武蔵:水の巻/ 吉川英治、物売りの声/ 寺田寅彦、合町山川記 / 林芙美子、年中行事覚書 / 柳田国男、塩昆布の茶漬け/ 北大路魯山人など

 唐芥(とうがらし)は15作品。狐/永井荷風、食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎、千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村など




■1909年(明治42年)刊の徳田秋声著「足跡」 1910年(明治43年)



徳田秋声著「足跡」  1910年(明治43年)
縮緬の小片で叔母が好奇に拵えた、蕃椒(とうがらし)ほどの大きさの比翼の枕などがあった。それを見ても叔母の手頭の器用なことが解った。
 

蕃椒

とうがらし

 
“唐芥子”のいろいろな読み方と例文|ふりがな文庫'より引用
 蕃椒(とうがらし)は15作品。 古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花、浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男など




1910年(明治43年)の柘植六郎著「実験蔬菜園芸新書」



柘植六郎著「実験蔬菜園芸新書」  1910年(明治43年)

蕃椒(たうがらし)

植物関連の専門書が 蕃椒(たうがらし)を使っているので、園芸、野菜栽培等の本は戦前1948年まで 蕃椒(たうがらし)を使っています。

  

 



実験蔬菜園芸新書 - 国立国会図書館デジタルコレクション より引用

「蕃椒」、1910-1919年の検索結果(一部)

 

国立国会図書館デジタルコレクション - >「蕃椒」の検索結果 より引用

 




■1912年(大正1年)刊の語句楼山人 著「現代名士抱腹珍談 」 




語句楼山人 著「現代名士抱腹珍談」  1912年(大正1年)
 
 唐辛子(とうがらし)
 
  











 



現代名士抱腹珍談 18/102- 国立国会図書館デジタルコレクションより引用





■1916年(大正5年)刊の森鴎外著「渋江抽斎」 


森鴎外著「渋江抽斎」  1916年(大正5年)
 平秋は皆物の淡きに唐芥子(とうがらし)
 
  
唐芥子

とうがらし

 
“唐芥子”のいろいろな読み方と例文|ふりがな文庫'より引用




■1916年(大正5年)刊の森鴎外著「世阿弥の手紙>」 




森鴎外著「世阿弥の手紙」  1916年(大正5年)

わたくしは澀江抽齋の事蹟を書いた時、抽齋の父定所の友で、抽齋に劇神仙の號を讓つた壽阿彌陀佛の事に言ひ及んだ。
・・・・・・
此日には刀自の父榛軒が壽阿彌に讀經を請ひ、それが畢つてから饗應して還す例になつてゐた。饗饌には必ず蕃椒(たうがらし)を皿に一ぱい盛つて附けた。壽阿彌はそれを剩さずに食べた。
 
  
蕃椒

たうがらし

 
蕃椒のいろいろな読み方と例文|ふりがな文庫'より引用

森鴎外は大正5年に二通りの表記をしています。唐芥子(とうがらし)と蕃椒(たうがらし)。


 蕃椒(たうがらし)は4作品。金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉飯、坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)、の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋
 



■1922年(大正11年)刊の八百繁主人著「おいしく出来る家庭漬物の仕方」 

文芸関連だけでなく、一般書で「唐辛子」が使われています。


八百繁主人著「おいしく出来る家庭漬物の仕方」  1922年(大正11年)
唐辛子(たうがらし)
 
 
  


おいしく出来る家庭漬物の仕方92/101 - 国立国会図書館デジタルコレクションより引用 




「唐辛子」1920-1929年の検索
   

国立国会図書館デジタルコレクション - 検索結果




■1925年(大正14年)刊の村越三千男 編「大植物図鑑」 




村越三千男 編「大植物図鑑」 1925年(大正14年)

茄子科 タウガラシ(蕃椒)

   
  

大植物図鑑 139/804- 国立国会図書館デジタルコレクションより引用




■1927年(昭和2年)刊の
日本音曲全集刊行會出版「小唄うた沢端唄全集」 

「唐芥」はほとんど見られないが、こんなところで使われていました。


日本音曲全集刊行會出版「小唄うた沢端唄全集」  1927年(昭和2年)

唐芥(たうがらし)




「とんとん唐芥 辛子売りの呼び声に用いられている。」

端うたでは唐芥と書くが、唐辛子のことと言っているか。





1835年、曲亭 馬琴(著作堂)著 「近世流行商人狂哥絵図」の江戸のトウガラシのうたは

七色唐からし売

とん/\/\たうからし
ひりゝとからいは さんしよのこ
すわ/\からいは こしようの粉

けしの粉
胡麻のこ
ちんひの粉
とん/\/\たうがからし

  
小唄うた沢端唄全集 - Google Booksより引用




■1940年(昭和15年)刊の新村出 編『辞苑』(博文館)




新村出 編『辞苑』(博文館)  1940年(昭和15年)刊


とうがらし(唐辛・蕃椒)


ばんしょう(蕃椒)





*昭和戦前の辞書も「唐辛」



   
 
新村出編『辞苑』(博文館)
底本は、昭和16年3月30日発行の352版です。
(初版は昭和10年2月5日発行)
辞苑 - くうざん、本を見るより引用




■1940年(昭和15年)刊の牧野富太郎著「日本植物図鑑」

戦前昭和16年でもタウガラシの漢字に番椒・辣椒が使われています。「和名ハ唐芥子ノ意ナリ」とあります。


牧野富太郎著「日本植物図鑑」  1940年(昭和15年)

牧野富太郎著「日本植物図鑑」たうがらし  1940年(昭和15年)

 
 
牧野富太郎著「日本植物図鑑」1940年刊 p154-北隆館より引用




■1940年(昭和20年)刊の満洲]国立開拓指導員訓練所 編「北満に於ける蔬菜栽培法」



満洲]国立開拓指導員訓練所 編「北満に於ける蔬菜栽培法」1940年(昭和20年)

蕃椒(たうがらし)


 



北満に於ける蔬菜栽培法 - 国立国会図書館デジタルコレクションより引用





■ 1942年昭和17年)刊の柳田國男著「食料名彙」



柳田國男著「食料名彙」1942年(昭和17年)

テントコ 鳥取県の中津山村では、胡椒をテントコといっている。この地でコショウというのは蕃椒(ばんしょう)すなわちトウガラシのことである。蕃椒をコショウと呼ぶ地域は存外に弘い。

 
 
蕃椒

 
 
“蕃椒”のいろいろな読み方と例文|ふりがな文庫より引用

他の作品無し













(5)1945年-2021年(昭和20年-令和3)



戦後、植物図鑑では植物名を仮名書きにする流れがあります。正式には1988年(昭和63年)に刊行された『文部省 学術用語集 植物学編』かもしれません。そのため、植物図鑑では、番椒、唐辛子などの表記はなくなっています。
 1948年(昭和23年)刊の村越三千男 編「集成新植物図鑑」 「タウガラシ」
 1956年(昭和31年)刊の牧野富太郎著「日本植物図鑑・増補版(訂正版)」 「たうがらし」

植物学が植物名を仮名書きになるとともに、学術関係、農業関係も仮名書きが多くなっていきます。
 1985年(昭和60年)の小野崎博通「Pseudomonas SPP . によるカプサイシンのバニリルアミンへの分解」
 2012年(平成24年)の鳥取県農林総合研究所園 芸試験場「伝統野菜「三宝甘長とうがらし」の露地栽培安定 生産」
 
辞書類は、「とうがらし」の漢字は「唐辛子」になり、(唐辛・蕃椒・唐芥子)も記載されています。

日本薬局方では2019年でも「蕃椒」を「バンショウ」または「トウガラシ」として使っているようです。

国立国会図書館デジタルコレクション での検索(1870-2021年)で出てきた史料数
 ①とうがらし・トウガラシ778 ②唐辛子656 ③蕃椒224 ④たうがらし140  ⑤唐辛44 ⑥唐がらし40 ⑦番椒23 ⑧唐からし5 ⑨唐芥子1、唐芥1
 

Google検索でのページ数 検索条件:完全一致、訂正有
 ①唐辛子17 ①とうがらし17 ③トウガラシ16 ④唐辛11  ④番椒11 ⑥唐がらし10 ⑦蕃椒9 ⑧唐からし7 ⑨唐芥子6 ⑩、唐芥41

amazon検索数、2/10ページ内
 ①唐辛子64 ①とうがらし27 ③唐がらし20 ④トウガラシ7唐辛11  ⑤唐芥子4 ⑥蕃椒4 ⑦唐からし3 




1945年(昭和20年)10月刊太宰治著「お伽草子」 1945年(昭和20年)


太宰治著「お伽草子」 1945年(昭和20年)10月刊

 けれども、美しく高ぶつた處女の殘忍性には限りが無い。ほとんどそれは、惡魔に似てゐる。平然と立ち上つて、狸の火傷にれいの唐辛子(たうがらし)をねつたものをこつてりと塗る。狸はたちまち七轉八倒して、「ううむ、何ともない」。

 
唐辛子

 たうがらし
 
“唐辛子”のいろいろな読み方と例文|ふりがな文庫'より引用

太宰治 お伽草紙のカチカチ山-青空文庫より引用
 
その他、11作品で唐辛子(たうがらし)

木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太、郎銭形平次捕物控:215 妾の貞操 (旧字旧仮名) / 野村胡堂、桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋
合類大節用集-新日本古典籍総合データベース




■1948年(昭和23年)刊の村越三千男 編「集成新植物図鑑」

1925年(大正14年)刊の村越三千男 編「大植物図鑑」との違い。植物名はカタカナで漢字は出てきません。図が違う。

村越三千男 編「集成新植物図鑑」  1948年(昭和23年)

 

 
 

集成新植物図鑑78/493 - 国立国会図書館デジタルコレクションより引用



■1950年(昭和25年)の赤木,盛郎[他]著「天然培養基に於ける繁殖並に色素生産について」



赤木,盛郎[他]著「天然培養基に於ける繁殖並に色素生産について」  1950年(昭和25年)

唐辛子


 

  
 

Monilia Sitophilaに關する研究(第5報) : 天然培養基に於ける繁殖並に色素生産について - 国立国会図書館デジタルコレクションより引用




■1956年(昭和31年)刊の牧野富太郎著「日本植物図鑑・増補版(訂正版)」

1940年刊の牧野富太郎著「日本植物図鑑」の増補版ですが、漢字の記載がなくなっています。2008年版ではカタカナ表記になっています。
この時代でも南蛮こしょう、高麗胡椒、南京胡椒の名があると言ってます。

戦後、昭和27年ころから植物名を仮名書きにする流れがあります。正式には1988年(昭和63年)に刊行された『文部省 学術用語集 植物学編』かもしれません。そのため、植物図鑑では、番椒、唐辛子などの表記はなくなっています。放送関係でも同様になり、NHKでも上野の「サクラ」と表記されます。

「動・植物名を仮名書きする経緯は、戦後の国語改革以降ですが、厳密には、昭和27年学術用語の表記について国語審議会が学術用語分科審議会に回答したことに始まるようです。」植物名や動物名などを学術的に表記する場合、カタカナで書きますが、なぜ・いつ... - Yahoo!知恵袋



牧野富太郎著「日本植物図鑑・増補版(訂正版)」  1956年(昭和31年)


たうがらし

 

〈新牧野日本植物図鑑(2008年・平成20年)の記載
種番号:2662
科和名:なす科
科学名:Solanaceae
和名:トウガラシ
学名:Capsicum annuum L.
メモ:この種は初版(図番号:462)にも掲載されている。牧野新日本植物図鑑(1961)
以降は初版の図が使用されている。

牧野富太郎著「日本植物図鑑・増補版(訂正版)」 1956年刊 p1077-北隆館より引用




■1979年(昭和54年)の森一雄「魚の調理、火口と調味料



森一雄「魚の調理、火口と調味料」  1979年(昭和54年)

唐辛子

「香辛料 (英 Spice ;独 Gew “rz) とい う言 葉が 我 々 日本の 社 会に 普遍化 した の は ,第 2 次世 界大戦の あ との こ とで ある。
た だ 戦前に あ っ て も有名 な レ ス トラ ン の 食卓に 粉宋胡椒が 並 べ られ て い たで あろ うし ,また 日本人 と しては 古くか ら唐辛子や 生 姜を 漬物用 な どに .め ん 類に 七味唐辛子.また 東洋独特の 香辛料を ふ ん だん に 使用 した カ ン ーラ イ ス と い う食物 な どを 合 せ 考え る と,香 辛料 と い う言葉は な ん ら新 味の あ る もの で は ない 。」

調理科学、12(1)調理科学研究会出版

<


唐辛子

 

魚の調理, 加工と香辛料 - 国立国会図書館デジタルコレクションり引用

国立国会図書館デジタルコレクショで1970-1999年で「唐辛子」の表記が他の表記に比べ最も多くなっています。その一部を表示。


国立国会図書館デジタルコレクション での「唐辛子」(1970-1979年 )検索結果(一部)




  



■1983年(昭和58年)の三省堂編集所編「広辞林」(第6版)三省堂出版

1907年明治40年の金沢庄三郎著「辞林」 初版、1925年(この後広辞林)、1934年、1958年、1973年、1983年と続き、その後三省堂の中型国語辞典は「大辞林」(1988年初版)に移行し、「広辞林」の発行は行なわれていない。我が家にあるのは1883年「広辞林」第6版です
>。


三省堂編集所編「広辞林」(第6版)三省堂出版  1983年(昭和58年)

とうがらし  唐辛子 (唐辛・蕃椒)


ばんしょう (蕃椒)


1907年初版
たうがらし 唐辛 (蕃椒)
ばんせう 蕃椒



     
 

  
引用




1985年(昭和60年)の小野崎博通「Pseudomonas SPP . によるカプサイシンのバニリルアミンへの分解」

植物学が植物名を仮名書きになるとともに、農業関係、学術関係も仮名書きが多くなっていきます



小野崎博通「Pseudomonas SPP . によるカプサイシンのバニリルアミンへの分解」  1985年(昭和60年)

とうがらし  









1980-1998年の「とうがらし・トウガラシ」


 
 
国立国会図書館デジタルコレクション - 検索結果 (ndl.go.jp)より引用


■1997年(平成9年)の金田京助編「新明解国語辞典」(第4版)三省堂出版
<

<金田京助編「新明解国語辞典」(第4版)三省堂出版  1997年(平成9年)

とうがらし  唐辛子  (唐芥子とも書く)

ばんしょう 「蕃椒」は無し。


珍しく「唐芥子」出現

「ばんしょう」の項が無い。」






     
 




■2005年(平成17年)の「日本調理科学会誌. 38(3)家庭料理における香辛料の使用実態」



藤本,さつき[他]著「日本調理科学会誌. 38(3)家庭料理における香辛料の使用実態」  2005年(平成17年)

唐辛子

*何故か七味唐辛子だけ漢字、他はショウガ、コショウ、ゴマ。七味が付いたためか。
 


  
 

家庭料理における香辛料の使用実態 - 国立国会図書館デジタルコレクションより引用




2012年(平成24年)の鳥取県農林総合研究所園 芸試験場「伝統野菜「三宝甘長とうがらし」の露地栽培安定 生産」



鳥取県農林総合研究所園 芸試験場「伝統野菜「三宝甘長とうがらし」の露地栽培安定 生産」 2012年(平成24年)

とうがらし


*農業関連などの公共機関で「とうがらし」が多く使われている。

 

  
 



業務年報. 平成23年度 鳥取県農林総合研究所園 芸 試 験 場
- 国立国会図書館デジタルコレクション
より引用
国立国会図書館デジタルコレクショで2000年から「とうがらし・トウガラシ」の表記が他の表記に比べ最も多くなっています。
その一部を表示。「とうがらし」と「トウガラシ」は区別しないため同じ検索結果


国立国会図書館デジタルコレクション での「とうがらし」(2010-2019年 )検索結果(一部)






■2019年(令和元年)厚生労働省出版「日本薬局方. 第17改正 第2追補」



厚生労働省出版「日本薬局方. 第17改正 第2追補」  2019年(令和元年) 蕃椒




*薬局関連では、蕃椒を「バンショウ」として使っているようです。
 

日本薬局方. 第17改正 第2追補 185/203- 国立国会図書館デジタルコレクションより引用
>
  




■2021年(令和3年)のデジタル大辞泉デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典、植物名辞典

とうがらしは 【唐辛子・唐芥子・蕃椒】で、唐辛子が最初に出てきます。
「番椒」は今でも、「ばんしょう」とも呼んでいます。漢名ではありますが、「南番胡椒」の略名ともとれます。


デジタル大辞泉デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典、植物名辞典  2021年(令和3年)

【唐辛子・唐芥子・蕃椒】  「番椒」は今でも、「ばんしょう」とも呼んでいます。

■デジタル大辞泉デジタル大辞泉

・ばん‐しょう〔‐セウ〕【×蕃×椒】
トウガラシの別名。

・とう‐がらし〔タウ‐〕【唐辛子/唐芥=子/蕃=椒】
南蛮がらし

■精選版 日本国語大辞典

・ばん‐しょう ‥セウ 【蕃椒】
〔名〕 植物「とうがらし(唐辛子)」の漢名。

・とう‐がらし タウ‥ 【唐辛子・唐芥子・蕃椒】
漢名、蕃椒・辣椒。そらみとうがらし。なんばんごしょう。こうらいごしょう。《季・秋》

■植物名辞典

蕃椒
 トウガラシ


蕃椒(バンショウ)とは何? Weblio辞書りi引用



■国立国会図書館デジタルコレクション での検索(1870-2021年)で出てきた史料数

①とうがらし・トウガラシ778 ②唐辛子656 ③蕃椒224 ④唐がらし40  ⑤唐辛39 ⑥番椒23 ⑦たうがらし10 ⑧唐からし5 ⑨唐芥子1、唐芥1
 


  とうがらし
トウガラシ 
たうがらし  唐辛子  唐辛  唐芥子  唐芥  唐がらし  唐からし  蕃椒  番椒
 インターネット
公開資料
778 10 656 39 1 1 40 6 224 23
1870~1879年
 明治2-明治12年
0 0 0 0 0 0 0 0 7 1
1880~1889年 0 0 0 0 0 0 0 0 5 3
1890~1899年 0 0 0 1 0 0 0 0 9 2
1900~1909 0 2 0 3 0 0 0 0 14 1
1910~1919年
 明治43年-大正8年
7 2 1 9 1 0 1 0 60 4
1920~1929年 6 1  7 4 0 0 2 1 38 1
1930~1939年 3 13 7 0 1 2 0 31 2
1940~1949年
 昭和15年-昭和24年
3 2 8 5 0 0 3 0 20 0
1950~1959年 3 0 3 1 0 0 0 0 0 1
1960~1969年 3 0 0 0 0 0 1 0 1 0
1970~1979年 4 0 12 2 0 0 2 1 1 0
1980~1989年 11 0 14 0 0 0 4 1 3 2
1990~1999年
 平成2年-平成11年
12 0 41 1 0 0 2 0 1 0
2000~2009年 341 0 214 6 0 0 12 1 10 3
2010年~ 329 0 323 0 0 0 10 1 7 1
不明 59 0 ;20 0 0 0 1 1 17 2

*「とうがらし」と「トウガラシ」は区別しないため同じ検索結果

 *「唐辛」検索は、「唐辛子」を除いて検索しているが、下の画像のように「唐辛 子」とか「子」ではなく「予」、「干」など
  おかしな「唐辛子」が出てくる。それらを除いて、「唐辛」の件数を求めた。「唐芥」も同じ。

  




■Google検索でのページ数 2021.11.28


ツールの検索条件:すべての言語、期間指定なし、完全一致又はすべての結果。

検索条件「完全一致」のページ数で、検討します。
唐辛子17、とうがらし17、トウガラシ16、唐辛15が上位を占めます。

全ての時代のデジタル化された語句を検索しており、江戸時代の史料も検索するので「番椒」のページ数が14と多くなているとおもいます。


「完全一致」より「すべての結果」の方が多くなると思います。しかし、「唐芥」では「完全一致」の方が多くなっています。原因は不明です。

Coogle検索語 ページ数
検索条件:完全一致
ページ数
検索条件:すべての結果
唐辛子 17 (17) 19
とうがらし 17 (17) 25
トウガラシ 16 (16) 20
唐辛 11 (15) 18
番椒 11 14) 14
唐がらし 10 (10)  12
蕃椒  9 (10) 12
唐からし 7 (11) 14
唐芥子 6 6)  11
唐芥 4  (11) 10
検索条件:すべての言語、期間指定なし、完全一致と全ての結果。2021.11.28

*完全一致の条件で検索しても。後半検索語駕っ含まれていないページがある。
 ()は結果の訂正無し。()無しは訂正したぺーじ数 (唐辛では唐揚がでてくるなど)
*すべての結果は訂正無し


ページ数 検索条件:完全一致:「唐辛子」



■amazon検索数、Google検索数 2021.11.28


amazonで「とうがらし」で検索。記載文字の中の語句を集計、画像の文字は無視。

Googleの「ショッピング」で「とうがらし」で検索。記載文字の中の語句を集計、画像の文字は無視。

両サイトとも圧倒的に「唐辛子」が1位、そのあと「とうがらし」「唐がらし」「トウガラシ」




&nbsp語句 語句数
amazon.co.jp
ページ数 2/10
語句数
Coogle検索条件
ショッピングージ数 2/8
唐辛子 64 91
とうがらし 27 40
唐がらし 20 5
トウガラシ 7 20
唐芥子 4 0
蕃椒 4 0
唐からし 3 0
 検索語句:とうがらし 。2ぺーじの記載文字の中の語句を集計。2021.11.28








表 トウガラシの名称、漢字、振り仮名の変移



西暦 著者史料名 出版元 漢字 振り仮名等 
1630年 林羅山著「多識編」 京都 白芥 多宇可羅志 「トウガラシ」を記載した最も古い史料
『本草綱目』が底本
1633年 曲直瀬玄朔著「日用食性」 京都 白芥 タウカラシ トウガラシ」を記載した二番目に古い史料
『本草綱目』が底本
1645年 松江 重頼著「毛吹草」 京都 唐菘 タウカラシ 諸国名産ノ部 山城 畿内
1666年 中村惕斎 編「訓蒙図彙 」 京都 番椒 ばんせう 俗云 たうがらし
1671年 向井元升著「庖厨備用倭名本草」 京都 番椒 ばんせう 番椒ハ西國俗ニ云フナンバンゴセウナルベシ京関東ニテタウガラシト云フ
1683年 新井玄圭著「食物摘要 京都 番椒 タウカラシ 「番椒」に初めて「タウガラシ」の振り仮名
1678年 「本草薬名備考」 京都 白芥 タウカラシ
1680年 若耶三胤子編「合類節用集」 京都 白芥 タウガラシ ハクカイ 白芥(タウガラシ)は版を重ねて1861年まで刊行
1686年 黒川道祐著「雍州府志」 京都 唐芥子 無し 城国(現京都府南部)の地誌
唐芥子は、中華にいはゆる番椒これなり
1692年 井原西鶴著「世間胸算用」 江・京 唐がらし とうがらし 一般庶民向けの書物では「唐がらし」か
1693年 酒堂編「俳諧深川集」 芭蕉の俳句 京都 唐辛子 無し 現在最も多く使われている表記である
「唐辛子」が最初に記載された史料です
1695年 中村惕斎 編「頭書増補訓蒙図彙 」
(1666年「訓蒙図彙 」の増補版)
京都 番椒
番椒
ばんせう
たうからし
番椒に二種の振り仮名(ばんせう、たうからし)
1697年 人見必大著「本朝食鑑」 江戸 畨椒 トウカラシ 登宇加良志(トウカラシ)と訓む
1697年 宮崎安貞著著『農業全書 』 福岡 蕃椒 とうがらし 中国の「農政全書」参考、農事・農法を体系的に記述したもの。
1698年 岡本一抱著「広益本草大成」 京都 唐我羅志 トウガラシ  以上ノ両説ヲ考ルニ番椒(バンシャウ)ヲ以テ今ノ唐我羅志トスベキ
1698年 貝原益軒著「花譜」 福岡 蕃椒 たうがらし< 「朝鮮から来たのでこうらい胡椒」」と
「西國にて南蛮胡椒と稱す」
1707年 森川許六編「風俗文選」 江戸 畨椒 無し 蕉門俳人二九人の文章
「とうがらしの名を、南蛮がらしといへる」
1709年 貝原益軒著「大和本草」巻五 福岡 番椒 タウカラシ 巻五と異なる振り仮名を付けています。
朝鮮伝来説を主張するためか
1709年 貝原益軒著「大和本草」附録巻 福岡 蕃椒 カウライゴセウ
1712年 寺島良安編纂「和漢三才図会」 大阪 番椒 たうがらし 俗に南蛮胡椴 という。今は唐芥子という。
1733年 天野信景著「鹽尻 」 尾張 番椒 トウガラシ 随筆
1734年 菊岡沾凉 述 本朝世事談綺 」 江戸 番椒 たうがらし 朝鮮伝来説と南蛮伝来説
1763年 平賀源内著「物類品隲宝暦」 江戸 番椒 無し 和名タウガラシ
1775年 越谷吾山 編輯「物類称呼 武蔵 番椒 たうがらし 各地の方言を記載
1775年 醒狂道人何必醇 輯「豆腐百珍、続編」  大坂 唐辛 タウカラシ 「唐辛」が最初に記載された資料
1800年  畑 道雲著「燭夜文庫」 江戸  唐辛子 無し   狂歌狂文集
1801年 醐山人著「料理早指南」 とうがらし 無し  料理本は「とうがらし」
1804年 曾槃,白尾国柱著「成形図説」 薩摩 唐芥
番椒
タウカラシ
タウガラシ
本文の正式名称
図の表記
1807年 淺埜髙蔵 輯 著「会席料理細工庖丁」 京都 とがらし   料理本。簡略化して「とがらし」
1809年 岡林清達 稿「物品識名」 尾張 トウガラシ 番椒 別名 ナンバン
1811年 山本 亡羊著「懐中食性」 京都 番椒 とうがらし 疝気を治し、蟲を殺す。
1820年 「日用食鑑」 江戸 とうからし 番椒 民間薬としての役割。いろは順で記載
1829年 佐藤信淵・滝本誠一編 
「草木六部耕種法」
江戸 蕃椒 トウカラシ 1542年、ポルトガル人が大友宗麟に唐辛子の種子を献上
1835年 曲亭 馬琴(著作堂)著
「近世流行商人狂哥絵図」

江戸 唐からし たうからし 七色唐からし売
1852年 石塚豊芥子著 「近世商賈尽狂歌合」 江戸 蕃椒 とうがらし 七色蕃椒
1852年 黙斎先生道學標的講義(外題)   唐辛    
1856年 飯沼慾斎著「草木図説」 岐阜 タウガラシ 蕃椒 リンネの分類法により図示・解説
1859年 岡安定[他]著「品物名彙」 京都 トウガラシ ナンバン
蕃椒
 トウガラシの別名でナンバンが出てきます。
1859年 槙島 昭武編「合類大節用集 京都 白芥 タウガラシ 左側にカウライコセウ。
白芥が幕末まで残っています。
1879年
 明治12年
「歌舞伎新報」 東京 唐辛子  とうがらし  明治12年の雑誌。
1882年 岡本経朝編「面白奇聞話のたね: 11至15號」 東京 唐辛子  とうがらし 七種唐辛子(なないろとうがらし)
1889年 原在泉著「在泉習画帖」 京都 番椒 タウガラシ 明治22年の画帖。
1889年 大槻文彦 編「言海 」 東京 たうがらし

ばんせう
唐辛

蕃椒
別名:高麗胡椒、南蛮胡椒、南蛮ガラシ、ナンバン、蕃椒
あいうえお順の日本初の近代的国語辞典
1889年 幸田露伴著「風流仏」 東京 唐辛子 とうがらし 芭蕉から196年ぶりに唐辛子が出てきました
1891年 正岡子規著俳句集「寒山落木」 東京 唐辛子
蕃椒
唐からし
無し 唐辛子 24
蕃椒  18
唐からし 2
1900年 婦人衞生雑誌 - 第 131~140 号    唐辛子 無し 1980-1945年多くの書物で「唐辛子」が使われています」
1900年 井上頼圀 ・ 近藤瓶城 編俚言集覧 東京 唐がらし 無し 番椒
1902年 尾崎紅葉著「金色夜叉 」 東京 蕃椒 たうからし 蕃椒(たうがらし)4作品、
蕃椒(ばんしょう)1作品
(ふりがな文庫)
1903年 村井弦斎著「食道楽:春の巻」 東京 唐辛 <とうがらし 唐辛(とうがらし)15作品(ふ)
1906年 島崎藤村著 「破戒 」 東京 唐辛 たうからし 唐辛(たうがらし)10作品(ふ)
1907年 金沢庄三郎 著「辞林」三省堂出版 東京 たうがらし
ばんせう
唐辛
蕃椒
別名:蕃椒
唐辛は1889年
大槻文彦 編「言海 」と同
1907年 田功太郎佐藤礼介編
「内外実用植物図説」
東京 たうがらし (漢)蕃椒 あいうえお順で掲載
1908年 夏目漱石著 「三四郎」 東京 唐辛子 とうがらし 唐辛子(とうがらし)27作品(ふ)
1909年 徳田秋声著「足跡」 東京 蕃椒 とうがらし 蕃椒(とうがらし)10作品(ふ)>
1910年 柘植六郎著「実験蔬菜園芸新書」 東京 蕃椒 たうからし 園芸は戦前まで 蕃椒(たうがらし
1912年 語句楼山人 著「現代名士抱腹珍談」 東京 唐辛子 とうがらし
1916年 森鴎外著「渋江抽斎」
森鴎外著「世阿弥の手紙」
東京 唐芥子
蕃椒
とうがらし
たうからし
同じ年に二通りの表記をしています。
1922年 八百繁主人著「おいしく出来る家庭漬物の仕方」 東京 唐辛子 たうからし 庶民用書物でも唐辛子
1925年 村越三千男 編「大植物図鑑」 東京 タウガラシ 蕃椒
1927年
 昭和2年
日本音曲全集刊行會出版「小唄うた沢端唄全集」 1927年(昭和2年)刊   唐芥  たうからし  
1940年 牧野富太郎著「日本植物図鑑」 東京 たうがらし 番椒
辣椒
「和名は唐芥子」「南蛮胡椒の名あり」
1940年 満洲・・ 編「北満に於ける蔬菜栽培法」 蕃椒 たうからし 満名辣椒(ラーチャオ)
1942年 柳田國男著「食料名彙」 東京都 蕃椒 ばんしょう 蕃椒(ばんしょう)はこの作品のみ(ふ)
1945年
 昭和20
太宰治著「お伽草子」 東京都 唐辛子 たうがらし 10作品(ふ)
1948年 村越三千男 編「集成新植物図鑑」 東京都 タウガラシ 無し 漢字「蕃椒」が無くなりました。
1950年 赤木,盛郎著「天然培養基に於ける繁殖並に・・・」 東京都 唐辛子 無し 研究論文
1956年 牧野富太郎著「日本植物図鑑・増補班(訂正版)」 東京都 たうがらし 無し 「たうがらし(唐芥子の意)」「南番胡椒、南蛮、高麗胡椒、南京胡椒等の名あり」
1979年 森一雄「魚の調理、火口と調味料」 東京都 唐辛子 無し 国立国会図書館デジタルコレクション検索で1970-1999年で最も多い表記「唐辛子」
1983年 三省堂編集所編「広辞林」(第6版)三省堂出版 東京都 とうがらし
ばんしょう
唐辛子
蕃椒
別名:唐辛、蕃椒
 1985年 小野崎博通「Pseudomonas SPP . によるカプサイシンのバニリルアミンへの分解」    とうがらし  無し  学術関係もとうがらし・トウガラシが多くなる
1997年 金田京助編「新明解国語辞典」(第4版)三省堂出版 東京都 とうがらし 唐辛子 (唐芥子とも書く) 珍しく「唐芥子」出現
「ばんしょう」の項が無い。
2005年 藤本,さつき著「日本調理科学会誌.家庭料理における香辛料の使用実態」 東京都 唐辛子 無し 何故か七味唐辛子だけ漢字、他はショウが、コショウ、ゴマ。七味が付いたためか。
2012年 園芸試験場「伝統野菜「三宝甘長とうがらし」の・・」 東京都 とうがらし 無し 国立国会図書館デジタルコレクション検索で2000-2021年で最も多い表記「とうがらし・トウガラシ」
2019年 厚生労働省出版「日本薬局方. 第17改正 第2追補」 東京都 蕃椒 トウガラシ またはバンショウ。薬関係では蕃椒
2021年 デジタル大辞泉デジタル大辞泉 東京都 ばん‐しょう〔‐セウ〕 蕃椒 トウガラシの別名
2021年 デジタル大辞泉デジタル大辞泉 東京都 とう‐がらし〔タウ‐〕 唐辛子
唐芥子
蕃椒
南蛮がらし
2021年 精選版 日本国語大辞典 東京都 ばん‐しょう ‥セウ 蕃椒 〔名〕 植物「とうがらし(唐辛子)」の漢名
2021年 精選版 日本国語大辞典 東京都 とう‐がらし タウ‥ 唐辛子
唐芥子
蕃椒
漢名、蕃椒・辣椒。そらみとうがらし。なんばんごしょう。こうらいごしょう。《季・秋》
2021年 植物名辞典 東京都 蕃椒 トウカラシ
2021年 国立国会図書館デジタルコレクション での検索(1870-2021年)で出てきた史料数
①とうがらし・トウガラシ778 ②唐辛子656 ③蕃椒224 ④たうがらし140  ⑤唐辛44
⑥唐がらし40 ⑦番椒23 ⑧唐からし5 ⑨唐芥子1、唐芥1
 
2021年 Google検索のページ数、検索条件「完全一致」: ①唐辛子17 ①とうがらし17 ③トウガラシ16 ④唐辛15 ⑤番椒14 ⑥唐芥11・
Google検索の語句数、検索条件「ショッピング」 2/8ページ: ①唐辛子91 ②とうがらし40 ③トウガラシ20 ④唐がらし5 他は0
Amazon検索の語句数 2/10 ページ:①唐辛子64 ②とうがらし27 ③唐がらし20 ④トウガラシ7  ⑤唐芥子4 ⑤番椒4 ⑦唐からし3

*「畨」は「番」の異体字。その他の異体字「 鄱 蹯 蕃 潘 䮳 䆺 」   
 *出版元の記載ない場合は、著者の居住地から推定して記載。