富士山御中道の御庭付近にミヤマハナゴケが生えていました。
ミヤマハナゴケの二股に枝分かれした姿は白いサンゴに似て、可憐で、美しく、球状に群生する姿は白い手毬を敷きしめたように優雅で、見る人の心が癒されます。
ミヤマハナゴケの愛好家になり、「ミヤマハナゴケは地衣類です」と記載したが、地衣類とはなにかはまったく知らない。
ミヤマハナゴケの生物分類、知衣類とはなにか、Lichenは如何にして地衣と翻訳されたかなどをを調べた。
3.ミヤマハナゴケは地衣類
(1)地衣類とは何か
「 ミヤマハナゴケ(深山花苔)は、名前にコケがついているがコケ類ではなく、菌類と藻類が共生している地衣類です。」
と書いてから、反省した。書いた本人が、地衣類とは何か、全くわかっていない。ミヤコハナゴケ愛好家となった以上、その形状と色の美しさ、可憐さを鑑賞するだけでは不十分である。ミヤマハナゴケの分類学上の位置と「地衣類」を理解しなければと、調査した。しかし。かなり手ごわい、簡単に理解させてくれない。
ミヤマハナゴケを表題にして解説しているページが少ない。日本語では下に示したページだけのようです。
ここでは「ミヤマハナゴケは地衣類ハナゴケ科の樹状地衣植物」としている。
形態の特徴は「高さは5~10㎝程度となる小枝の分岐は、ほぼ等間隔にニ叉に枝分かれする同長ニ叉分岐枝を繰り返し、概して仮軸を形成しない。」とあり、上の写真をよく表してます。
ミヤマハナゴケ(深山花苔)
語源:
和名は、高山に見られるハナゴケの意から。
属名はギリシャ語のclados(枝)を語源としている。樹木状地衣のため枝別れすることから。
種小名は「星形の」の意。
学名:Cladonia stellaris
英名:Star reindeer lichen
植物分類:ハナゴケ科ハナゴケ属
園芸分類:地衣類
用途:極北地域ではトナカイやカリブーの食物源
原産地:北半球冷寒帯。日本(北海道~本州:中部地方以北)
解説:ミヤマハナゴケは地衣類ハナゴケ科の樹状地衣植物である。高山や寒地の地上に自生が見られる。日当たりのよい痩せた地味の場所に見られる。
高さは5~10㎝程度となる。小枝の分岐は、ほぼ等間隔にニ叉に枝分かれする同長ニ叉分岐枝を繰り返し、概して仮軸を形成しない。子柄表面に光沢は無く、淡黄緑色で、先端の丸い円柱状の姿となる。
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サイト「CKZ植物辞典」の「ミヤマハナゴケ」から引用
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仮軸状分枝:先端が成長を止め、やや下側から側方に新たに成長する先端が生じる、という型もあり、この結果生じる分枝のこと。 |
「ウィキペディアの分枝」より引用。 |
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Wikipediaの日本版には「ミヤマハナゴケ」の項目はないが、英語版に「ミヤマハナゴケ=Cladonia stellaris:クラドニアステラリス」の項目、解説がある。
ここでも「生態学的に重要な地衣類の種(ecologically important species of lichen)」とあります。両サイトとも地衣類の種と記載してます。
しかし、ここでの科学的分類は菌界とあり、分類の項目に地衣類がありません。「科学的分類」と「地衣類」の調査が必要です。
「他のほとんどの地衣類と同様に、Cladonia stellarisはゆっくりと成長し、良好な条件下で年間平均0.5cm未満です。」とあり、毎年成長していく生物のようです。
花のような形態から、冬に枯れて雪解けとともに、新たに芽を出して成長すると安易に思い、キノコのように年度により沢山生える当たり年があるかと思っていましたが、違うようです。冬でも雪の下で枯れず小さくなることなく、同じ形状で生きているのでしょうか。このような生態だと、同じ場所に、同じ姿で昨年より成長したミヤマハナゴケに会うことができるようです。昨年は球状の塊だったが、今年は平坦なミヤマハナゴケということもないようです。
Cladonia stellaris クラドニアステラリス
Cladonia stellarisは、生態学的に重要な地衣類の種であり、北極圏の北極圏の北極圏および北極圏の地面の広い領域に連続したマットを形成します。この種は、冬の間、トナカイとカリブーの好ましい食料源であり、栄養循環と土壌微生物群集の調節に重要な役割を果たします。他の多くの地衣類と同様に、
Cladonia stellarisは、二次代謝産物の多くが抗菌性であるため、その化学的性質のために人間によって直接使用されます(例、ウスニン酸)が、鉄道模型の展示用に「偽物の木」として収穫され販売されるという独特の特徴もあります。インテリアデザインの吸音材としても使用されます。
Cladonia stellarisは、外観がマット形成性でフルチコース(低木状)であり、裸の土壌または砂利の表面で成長するため、陸生、陸生、またはエピゲックとして説明されます。他のほとんどの地衣類と同様に、Cladonia
stellarisはゆっくりと成長し、良好な条件下で年間平均0.5cm未満です。
類似したから、この種の異なっCladoniaのrangiferinaとCladoniaのarbusculaそれははるかに明確なクッション型のパッチを形成し、上から見たときの分岐密に持っているように見えますことで。
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サイトの機械翻訳
科学的分類 |
王国: |
菌類
|
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分割: |
子嚢菌
|
クラス: |
Lecanoromycetes
|
注文: |
チャシブゴケ |
家族: |
クラドニア科
|
属: |
クラドニア
|
種: |
C. ステラリス
|
二名法 |
クラドニア・ステラリス
(Opiz)Pouzar&Vězda(1971)
|
類義 語 |
Cenomyce stellaris Opiz (1823)
- Cladina stellaris (Opiz) Brodo (1976)
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当方の翻訳
科学的分類 |
界: |
菌界
|
|
門: |
子嚢菌門 |
網: |
チャシブゴケ菌網
|
目: |
チャシブゴケ目 |
科: |
ハナゴケ科
|
属: |
ハナゴケ属
|
種: |
ミヤマハナゴケ
|
学名 |
クラドニア・ステラリス
(Opiz)Pouzar&Vězda(1971)
|
類義 語 |
Cenomyce stellaris Opiz (1823)
- Cladina stellaris (Opiz) Brodo (1976)
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英文版
Scientific classification |
Kingdom: |
Fungi
|
Division: |
Ascomycota
|
Class: |
Lecanoromycetes
|
Order: |
Lecanorales
|
Family: |
Cladoniaceae
|
Genus: |
Cladonia
|
Species: |
C. stellaris
|
Binomial name |
Cladonia stellaris
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Synonyms |
Cenomyce stellaris Opiz (1823)
- Cladina stellaris (Opiz) Brodo (1976)
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Cladonia stellaris
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WikipediaのCladonia stellaris(英語版)より引用。google chromeの機械翻訳。 |
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百科事典では「ハナゴケ」の項目に高山性のハナゴケとして記載している。ハナゴケとミヤマハナゴケの相違点の記載はありません。
地衣類の共生菌は、基本的には胞子で殖え、その胞子は、子器と呼ばれる場所で作られます。各枝の先端にその子器があります。
子器は、子嚢菌 類の生殖器官。子嚢胞子が形成される。
ハナゴケは、写真では球状にはなっていません
ハナゴケ
ハナゴケ科の代表的な地衣類。クラドニアともいう。体は平らないわゆるコケ状にならず,3~10cmの軸を生じその一側にかたよって多数の分枝を出し地上に立上がる。
ひとつひとつは樹状であるが,全体としては枝が互いにからみ合って絨毯状になる。軸状の茎は子器柄で,各枝の先端に子器を生じる。中空でときに破れて孔が開く。軸の色は日陰では白ないし汚灰色,日当りがよければ帯黒色となる。子器は半球形で,暗褐色ないし黒褐色。各子嚢には8個の長卵形または楕円形の胞子を生じる。近似種には子器が黄褐色のワラハナゴケ
C. sylvatica,日当りがよくても黒色を帯びないハナゴケモドキ C. mitisがある。なお,高山性のものに ミヤマハナゴケC. alpestrisがある。本種,近似種ともに世界各地に広く分布する。英名トナカイゴケの名があるようにトナカイの飼料となる。
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ハナゴケ
ハナゴケ(reindeer lichenまたはgrey reindeer lichen)は、ハナゴケ科に属する淡色の樹枝状地衣である。水はけがよく開放的な場所であれば、冷たい気候でも暑い気候でも育つ。非常に耐寒性が高く、高山ツンドラ地域で優先種である。
葉状体は樹枝状で、枝分かれが非常に多く、各々の枝がさらに3-4に分かれている。太い枝は、直径1-1.5mm程である[3]。色は灰色、白色、茶灰色である。厚さ10cmにも及ぶマットを形成する。

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ハナゴケ |
分類 |
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学名 |
Cladonia rangiferina |
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(2)ミヤマハナゴケの分類
サイトでのミヤコハナゴケの分類を検討する前に、現在の生物の分類の状況を調べた。
学校で「生物界は植物界と動物界からなる」と学んだ世代にとって、現在の生物の分類は、驚くほど複雑である。しかも生物の分類は、現在も定説はなく変化を続けているようです。
現在は生物全体を3ドメインに分類します。それがさらに「クラスター」-「スーパーグループ」に分類され、その下に伝統的な分類階級「界-門-網-科-属-種」が続きます。
種名がミヤマハナゴケである生物は、最も簡単に分類すると以下のようになります。「真核生物ドメイン-アモルフェア-オビストコンタ-菌界」に属します。
生物の分類
生物に関する科学的知見が蓄積されるにつれ、生物の分類は何度も修正されたが、特に20世紀末の分子系統解析の成果により、大きな修正が図られた。
生物全体の3ドメインへの分類
分子系統解析(の一つである16S rRNA系統解析)によって得られた大きな成果は、生物全体がドメインと呼ばれる3つの単系統群(細菌(Bacteria)、古細菌(Archaea)、真核生物(Eukaryota))に分類される事がわかったことである。
これは、これまで「原核生物」と称されていた真核生物以外の生物群が実は細菌と古細菌という2種類の系統に分かれていた事を意味する。また(後生)動物のような我々のよく知る多細胞生物はいずれも真核生物に属するが、単細胞生物は、細菌、真核生物、古細菌のいずれかのドメインに属する。
3ドメイン説とそれまでの説の関係を以下にまとめた:
リンネ
(1735年)
2界説 |
ヘッケル
(1894年)
3界説 |
ホイタッカー
(1969年)
5界説 |
ウーズ
(1977年)
6界説 |
ウーズ
(1990年)
3ドメイン説 |
具体例 |
|
原生生物界 |
モネラ界 |
真正細菌界 |
細菌 |
大腸菌、放線菌、藍色細菌 |
古細菌界 |
古細菌(アーキア) |
メタン生成菌、好熱好酸菌 |
原生生物界 |
原生生物界 |
真核生物 |
藻類、原生動物、変形菌類 |
植物界 |
植物界 |
菌界 |
菌界 |
キノコ、カビ、地衣植物 |
植物界 |
植物界 |
コケ類、シダ類、種子植物 |
動物界 |
動物界 |
動物界 |
動物界 |
無脊椎動物、脊椎動物 |
上の表の「動物界」、「植物界」などに登場する「界」という語は、生物の分類階級の一つで、3ドメイン説が登場するまでは最上位の分類階級として位置づけられていた。それに対し3ドメイン説ではまず生物全体を3つのドメインに分け、これらドメインよりも下位の分類階級として「界」を扱う。なお、日本の初等教育では3ドメイン説以前の二界説(2011年まで)ないし五界説(2012年以降)に基づいて生物の分類を説明している。
真核生物のスーパーグループ
分子系統解析によるもう一つの大きな成果は、真核生物がいくつかのスーパーグループという単系統群に分類でき、さらにそれらスーパーグループがいくつかのクラスターという単系統群にまとめられる事がわかった事である。
(ミヤマハナゴケが属する真核生物から菌界までのクラスターとスーパーグループだけを表示。これらが分類階級になっているかは曖昧。)
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クラスター |
スーパーグループ |
下位分類、具体例 |
真核生物 |
アモルフェア Amorphea
|
オピストコンタ Opisthokonta |
Nucletmycea (菌類 など) |
下位の分類階級
ドメインやスーパーグループといった上位の分類の下には、界 (kingdom) や門(phylum/division)といった、伝統的な分類階級がある。これら伝統的な分類体系は、あくまでも人が扱いやすくするための人為的なものである側面があることに注意する必要がある。ただしさまざまな分野で伝統的な分類体系を系統学の知見を反映させた体系に組替える動きが盛んである。
以下では現時点で生物分類でほぼ一般的に使われている分類体系フレームを記述する。
和名 |
英名 |
ラテン語名 |
例:ヒト |
例:ローズマリー |
例:エノキタケ |
例:大腸菌 |
例:A. ペルニクス |
ドメイン: |
domain: |
regio: |
真核生物 |
真核生物 |
真核生物 |
細菌 |
古細菌 |
界: |
kingdom: |
regnum: |
動物界 |
植物界 |
菌界 |
なし
| プロテオ古細菌界 |
門: |
phylum
/division: |
phylum
/divisio: |
脊索動物門
(脊椎動物亜門) |
被子植物門 |
担子菌門 |
プロテオバクテリア門 |
クレン古細菌門 |
綱: |
class: |
classis: |
哺乳綱 |
双子葉植物綱 |
菌蕈綱 |
γプロテオバクテリア綱 |
テルモプロテウス綱 |
目: |
order: |
ordo: |
サル目 |
シソ目 |
ハラタケ目 |
エンテロバクター目 |
デスルフロコックス目 |
科: |
family: |
familia: |
ヒト科 |
シソ科 |
キシメジ科 |
腸内細菌科 |
デスルフロコックス科 |
属: |
genus: |
genus: |
ヒト属
Homo |
ローズマリー属
Rosemarinus |
エノキタケ属
Flammulina |
エスケリキア属
Escherichia |
アエロピュルム属
Aeropyrum |
種: |
species: |
species: |
H. sapiens |
R. officinalis |
F. velutipes |
E. coli |
A. pernix |
・中間的分類が必要なときの階級名は、その分類単位よりも上位の分類には、大 (magn-)・上 (super-) を、下位の分類には、亜 (sub-)・下 (infra-)・小 (Parv-) などの接頭語を各階級の頭につけて生成させる。
|
「ウィキペディアの生物の分類」より引用。中略もしてます。 |
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各サイトでのミヤマハナゴケの分類
分類が日本語で記載されているのは①、②。③と④は当方で翻訳。
③と④は同じ分類。①は③と④の分類にチャワンタケ亜門とチャシブゴケ菌亜綱が追加されているが他は同じ分類。
②が①、③、④の分類と異なる分類
門名:①、③、④では子嚢菌門、②では地衣植物
網名:①、③、④はチャシブゴケ菌網、②では子嚢菌類、
目名:①、③、④はチャシブゴケ目、②ではレカノラ目。英語はどちらもLecanorales。
① 写真で見る生物の系統と分類のヤマハナゴケ Cladonia stellaris」より引用 |
和名 |
ミヤマハナゴケ(深山花苔) |
学名 |
Cladonia stellaris
(Opiz) Pouzar & Vezda |
界名 |
菌界 |
Kingdom Fungi |
門名 |
子嚢菌門 |
Phylum Ascomycota |
亜門名 |
チャワンタケ亜門 |
Subphylum Pezizomycotina |
綱名 |
チャシブゴケ菌綱 |
Class Lecanoromycetes |
亜綱名 |
チャシブゴケ菌亜綱 |
Subclass Lecanoromycetidae |
目名 |
チャシブゴケ目 |
Order Lecanorales |
科名 |
ハナゴケ科 |
Family Cladoniaceae |
属名 |
ハナゴケ属 |
Genus Cladonia |
種小名 |
ミヤマハナゴケ |
Cladonia stellaris
|
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③ サイト「GBIF-地球規模生物多様性情報機構」の
「Cladonia stellaris (Opiz) Pouzar & Vezda」より引用 |
和名 |
ミヤマハナゴケ(深山花苔) |
学名 |
Cladonia stellaris
(Opiz) Pouzar & Vezda |
界名 |
菌界 |
Fungi |
門名 |
子嚢菌門 |
Ascomycota |
亜門名 |
|
|
綱名 |
チャシブゴケ菌綱 |
Lecanoromycetes |
亜綱名 |
|
|
目名 |
チャシブゴケ目 |
Lecanorales |
科名 |
ハナゴケ科 |
Cladoniaceae |
属名 |
ハナゴケ属 |
Cladonia P.Browne |
種小名 |
ミヤマハナゴケ |
Cladonia stellaris
(Opiz) Pouzar & Vezda |
|
(当方で翻訳) |
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④ Wikipediaの<Cladonia stellaris(英語版)より引用
上記表の構成を変え再掲載再掲載 |
和名 |
ミヤマハナゴケ(深山花苔) |
学名 |
Cladonia stellaris
(Opiz) Pouzar & Vezda |
界名 |
菌界 |
Fungi |
門名 |
子嚢菌門 |
Ascomycota |
亜門名 |
|
|
綱名名 |
チャシブゴケ菌綱 |
Lecanoromycetes |
亜綱 |
|
|
目名 |
チャシブゴケ目 |
Lecanorales |
科名 |
ハナゴけ科 |
Cladoniaceae |
属名 |
ハナゴケ属 |
Cladonia |
種小名 |
ミヤマハナゴケ |
C.stellaris
|
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(当方で翻訳) |
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② サイト「サイエンスミュージアムネット」でミヤマハナゴケの門名が他のサイトと異なり「地衣植物」になっているのは何故か。
これは菌類の分類が変化したためと考えます。 「ウィキペディアの生物の分類」の菌界には「地衣植物門」があります。しかし、 「ウィキペディアの菌類」では、2007年に見直された菌界の分類体系の中に「地衣植物門」はありません。また、「地衣類、かつては独立した分類群として扱うこともあり、地衣植物門を認めたこともある。」との記載があります。
「サイエンスミュージアムネット」でのミヤマハナゴケの門名「地衣植物」は2007年以前の古い分類になると推察します。
しかし、現在植物界ではなく菌界に属する菌類が「地衣植物門」と門名に「植物」が入るのは違和感があります。これは、生物分類の五界説以前(1969年以前)には、菌類が植物界に分類されていたためかもしれません。
また、菌類の分類は変化を続け、ウィキペディアの各サイトで異なる分類をしています。
生物分類に地衣植物門
このようなことから、地衣類を単独の生物のように見ることも出来る。かつては独立した分類群として扱うこともあり、地衣植物門を認めたこともある。しかし、地衣の形態はあくまでも菌類のものであり、例えば重要な分類的特徴である子実体の構造は完全に菌類のものである。また同一の地衣類であっても藻類は別種である例もあり、地衣類は菌類に組み込まれる扱いがされるようになった。現在の判断では『特殊な栄養獲得形式を確立した菌類』である。国際植物命名規約では、地衣類に与えられた学名はそれを構成する菌類に与えられたものとみなすと定められている。
「ウィキペディアの地衣類」より引用
菌類の一般的分類例に地衣植物門がある。
菌界
・ツボカビ門(ツボカビ)
・接合菌門(ケカビ、クモノスカビ)
・子嚢菌門(酵母、アカパンカビ)
・担子菌門(キノコ)
・不完全菌(アオカビなど。現在は分類群としては認めない)
・地衣植物門(菌類と藻類の共生体・学名は菌類のもの)
「ウィキペディアの生物の分類」より引用。
菌類は植物から独自の生物郡に
生物を二界に分類していたころは、菌類には運動性がなく細胞壁を持つことなどから植物に分類されていた。この場合、構造が単純であることもあって、葉緑体を失った退化的な植物である、と考えられることが多かった。しかし、菌類についての理解が深まるにつれ、細胞構造や分子遺伝学的な系統解析などの研究から得られる情報などから、植物とは異なる、独自の生物群であると考えられるようになり、五界説の頃より独立した界として広く認められるようになった。現在の分子遺伝学的情報からは、植物よりも動物に近い系統であることがわかっている。動物と菌類を含む系統のことをオピストコンタという。
21世紀初頭の現在、菌類の分類体系には手が入り続けている。2007年に見直された分類体系では子嚢菌門、担子菌門、ツボカビ門、コウマクキン門、ネオカリマスティクス門(以上の三門が旧ツボカビ門)、グロムス菌門、微胞子虫門、および門としての分類の難しい4亜門(主に旧接合菌門に由来)に分類されている。
「ウィキペディアの菌類」より引用
菌界の下にディカリア亜界がありその下に子嚢菌門がある
ディカリア (Dikarya) は、菌界 (Fungi) の一部分を構成する分類群(亜界 subkingdom)のひとつである。直訳すれば「二核の分類群」であるが、実際には、単純に「一個の細胞の中に二個の核を含む」ことを意味するのではなく、生活環の少なくとも一部において「おのおのが性的に異なる因子を有した二個(あるいはそれ以上)の核が、融合することなく一個の細胞の中に共存する」重相の世代を持つことを特徴とする[2]。21世紀に入ってから提唱された概念であり、日本語としての訳語はまだ安定しておらず、「二核菌亜界」あるいは「重相菌亜界」などと訳される。
担子菌門 (Basidiomycota) と子嚢菌門 (Ascomycota) とを包含する。これに所属する菌類は、一般に二核体 (dikaryon)
を形成する。これは菌糸または単細胞(いわゆる酵母など)の体制をとり、鞭毛を欠いている。従来の菌類の分類体系において藻菌類の名のもとに扱われてきた、古典的な呼称としての鞭毛菌類(ツボカビなどを含む)および接合菌類(ケカビなどを含む)は、ディカリアには含まれない。
「ウィキペディアのディカリア」より引用
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以上の検討から、ドメインやスーパーグループも分類階級に組み込み、ディカリア亜界も入れて、ミヤマハナゴケの分類を以下のように作成した。これが現在の分類階級に一致するかは不明です。
和名 |
ミヤマハナゴケ(深山花苔) |

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学名 |
Cladonia stellaris
(Opiz) Pouzar & Vezda |
ドメイン |
真核生物 |
Eucarya |
上界 |
オピストコンタ上界 |
Opisthokonta |
界名 |
菌界 |
Fungi |
亜界 |
ディカリア亜界 |
Dikarya |
門名 |
子嚢菌門 |
Ascomycota |
亜門名 |
チャワンタケ亜門 |
Pezizomycotina |
綱名名 |
チャシブゴケ菌綱 |
Lecanoromycetes |
亜綱 |
チャシブゴケ菌亜綱 |
Lecanoromycetidae |
目名 |
チャシブゴケ目 |
Lecanorales |
科名 |
ハナゴケ |
Cladoniaceae |
属名 |
ハナゴケ属 |
Cladonia |
種小名 |
ミヤマハナゴケ |
C.stellaris
|
*サイト「気まぐれ生物学」の「生物分類表」を参考にした。ここではクラスタ-が入っていない。
ミヤコハナゴケは美しい事で十分です。何故地衣類に属するかなどは、知らなくてもいいです。と、思ってしまいますが、ここでひと休みしてさらに進みましょう。
ひと休み 関係生物の分類
分類学を調べたので、御中道で見られる生物及び関係する生物の分類を示します。すべて 「ウィキペディア」の記載を採用してます。
単純な分類が少ないことがわかり、これらの分類を理解するにはかなりの時間と努力が必要です。
「亜門」、「亜網」、「亜科」、「亜属」、「節」があり、「記載無し:菊類」があります。
和名 |
ハナゴケ
(花苔) |
カラマツ
(唐松) |
ハクサンシャクナゲ
(白山石楠花) |
コケモモ
(苔桃) |
タマゴダケ
(卵茸) |
画像 |
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学名 |
Cladonia rangiferina
|
Larix kaempferi (Lamb.) Carrière |
>Rhododendron brachycarpum G. Don
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Vaccinium vitis-idaea L. |
A. caesareoides
|
界名 |
菌界 |
植物界 |
植物界 |
植物界 |
菌界 |
門名 |
子嚢菌門 |
被子植物門> |
被子植物門 |
被子植物門 |
担子菌門 |
亜門名 |
チャワンタケ亜門 |
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綱名 |
チャシブゴケ菌綱 |
マツ網 |
双子葉植物網 |
階級無し:コア真正双子葉類 |
真正担子菌網 |
亜綱 |
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ビワモドキ亜綱 |
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目名 |
チャシブゴケ目 |
マツ目 |
ツツジ目> |
ツツジ目 |
ハラタケ目 |
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階級無し:菊類 |
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科名 |
ハナゴケ科 |
マツ科 |
ツツジ科 |
ツツジ科 |
テングタケ科 |
亜科 |
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|
スノキ亜科 |
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属名 |
ハナゴケ属 |
カラマツ属 |
ツツジ属 |
スノキ属 |
テングタケ属 |
亜属 |
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シャクナゲ亜族 |
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テングタケ亜属 |
節 |
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タマゴダケ節 |
種 |
ハナゴケ |
カラマツ
L.kaempferi |
ハクサンシャクナゲ |
コケモモ V. vitis-idaea |
タマゴタケ
A. caesareoides |
リンク元 |
ハナゴケ |
カラマツ |
ハクサンシャクナゲ |
コケモモ |
タマゴタケ |
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(3)地衣類とは
「地衣類とは何か」と「コケとの関係」について、三サイトの記述を示します。
日本地衣学会では、「地衣類は、系統的に一つのまとまりを成す分類群ではなく、複数の系統から生じた、藻類との共生という生態的あるいは生理的な特徴を共有する(=「地衣化」する)菌類の総称。」とありますが、基礎知識がない当方にとっては、「共生」がよくわからない。
ミヤマハナゴケ(深山花苔)の和名の由来はわかりました。
地衣類は、コケ類とは異なるが、コケ植物と共通点があり、生育環境も共通している。それゆえ多くの言語において同一視され、実際に地衣類の和名の多くに「○○ゴケ」といったものがあたえられている。花のような苔で高山に咲く。
『地衣類のことを「こけ」と呼んでも間違いではありません。しかし、コケ植物(あるいはコケ類)というと間違いになります。』
地衣類とは
地衣類は、菌類と藻類(主に緑藻やシアノバクテリア)が共生関係を結んでできた複合体です。また、分類学(国際植物命名規約)上は、その複合体を構成する菌類(共生菌)のことを地衣類とみなしています。従って地衣類は、系統的に一つのまとまりを成す分類群ではなく、複数の系統から生じた、藻類との共生という生態的あるいは生理的な特徴を共有する(=「地衣化」する)菌類の総称です。
一方、地衣類は、一般には蘚苔(センタイ)類(コケ植物)などとともに「こけ」と認識されていることが多いです。「こけ」は「むし」などと同じく雑多な小さな生物群の総称であり専門用語ではありませんので、地衣類のことを「こけ」と呼んでも間違いではありません。しかし、コケ植物(あるいはコケ類)というと間違いになります。
サイト「日本地衣学会 The Japanese Society for Lichenology」の「地衣類とは」
|
地衣類
地衣類(ちいるい)は、菌類(主に子嚢菌類)のうちで、藻類(シアノバクテリアあるいは緑藻)を共生させることで自活できるようになったものである。一見ではコケ類などにも似て見えるが、形態的にも異なり、構造は全く違うものである。
地衣類というのは、陸上性で、肉眼的ではあるがごく背の低い光合成生物である。その点でコケ植物に共通点があり、生育環境も共通している。それゆえ多くの言語において同一視され、実際に地衣類の和名の多くに「○○ゴケ」といったものがあたえられている。
「ウィキペディアの地衣類 」より引用 |
地衣類(ちいるい)は一般には「こけ」と呼ばれます。「こけ」には、蘚苔(せんたい)類(コケ植物ともいう)など様々な植物の仲間が含まれますが、 じつは、地衣類は植物ではありません。
菌類の仲間が,藻類(そうるい)と共生して一つの体を作っているのです。
と言ってもよくわからない・・・
という方がほとんどだと思いますので、これから細かく分けて説明していきたいと思います。
「千葉県立中央博物館」の「地衣類って何?」, 「地衣類ってなあに? 」 |
「地衣類」と「共生」に関して、、当方が持った疑問点を 「日本地衣学会」、「ウィキペディアの地衣類 」、「地衣類って何?」(枠の色でリンク元を表示)のサイトから解説を抜粋して記載します。三番目の「地衣類って何?」の解説を読んで、はじめて地衣類がわかったような気がしました。
①地衣類の共生について
地衣類の構造を作っている菌類は、光合成できないため独り立ちできないので、生きていくエネルギーを他から得なければなりません。外部の有機物を利用する従属栄養生物です。
その方法として、吸収する相手が生きているのか、死んでいるのかなどによって、腐生・寄生・共生という3つの生き方に分かれます.
生きた植物や藻類から栄養をもらいながら,安定した関係を築くのが共生です。菌類が藻類を確保することを地衣化といい、地衣化した菌類は地衣類と呼びます。
地衣類の場合、菌糸で作られた構造の内部に藻類が共生しており、藻類の光合成産物によって菌類が生活します。
共生菌は、共生藻から糖アルコールを吸収し、これをエネルギー源にして生きています。つまり共生菌は栄養の面では、共生藻に頼りっぱなしです。
しかし、共生菌は周りから水とともに養分を吸収し、共生藻に与えています。また、菌糸の層によって有害な紫外線から、共生藻を守ります。
菌と藻は互いに助け合って生活しており、このように安定した関係を築くのが共生です。
地衣類
しかし地衣類の場合、その構造を作っているのは菌類である。大部分は子嚢菌に属するものであるが、それ以外の場合もある。菌類は光合成できないので、独り立ちできないのだが、地衣類の場合、菌糸で作られた構造の内部に藻類が共生しており、藻類の光合成産物によって菌類が生活するものである。藻類と菌類は融合しているわけではなく、それぞれ独立に培養することも不可能ではない。したがって、2種の生物が一緒にいるだけと見ることもできる。ただし、菌類単独では形成しない特殊な構造や菌・藻類単独では合成しない地衣成分がみられるなど共生が高度化している。
このようなことから、地衣類を単独の生物のように見ることも出来る。かつては独立した分類群として扱うこともあり、地衣植物門を認めたこともある。しかし、地衣の形態はあくまでも菌類のものであり、例えば重要な分類的特徴である子実体の構造は完全に菌類のものである。また同一の地衣類であっても藻類は別種である例もあり、地衣類は菌類に組み込まれる扱いがされるようになった。現在の判断では『特殊な栄養獲得形式を確立した菌類』である。国際植物命名規約では、地衣類に与えられた学名はそれを構成する菌類に与えられたものとみなすと定められている。
菌類が藻類を確保することを地衣化という。地衣を構成する菌類は子嚢菌類のいくつかの分類群にまたがっており、さらに担子菌類にも存在する。したがって独立して何度かの地衣類化が起こったのだと考えられている。また、子嚢胞子など有性胞子の形成が見られないものもあり、そのようなものは不完全地衣と呼ばれる。
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地衣体横断模式図(典型的な異層状地衣類)a:上皮層、b:藻類層、c:髄層、d:下皮層、e:偽根
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菌類と藻類の関係
●菌類の生き方は,腐生・寄生・共生
吸収する相手が,生きているのか,死んでいるのかなどによって,腐生・寄生・共生という3つの生き方に分かれます.
腐生: 落ち葉や枯れ枝,枯れ木などを死んでいるもの,あるいは死んでいる部分を分解していく. ・シイタケ(枯木から)
寄生:生きた植物から栄養を得て,その部分,更には全体を枯らしてしまうこともあります. ・ウドンコ菌(様々な農作物にウドンコ病を引き起こす仲間)
共生: 生きた植物や藻類から栄養をもらいながら,安定した関係を築きます.
・アカマツとマツタケ(菌根菌)の関係(菌根)がこれにあたります.地衣類(菌類と藻類)も共生にあたります.
藻類と共生する菌類
地衣類は菌類の仲間ですが、その体を顕微鏡で観察すると、必ずもう一つの生物が見つかります。
それは藻類(そうるい)です。菌類と藻類は共生して、一つの体を作っているのです。
マツゲゴケ マツゲゴケの断面顕微鏡写真 体は菌糸でできていて,緑藻が共生している |
① |
② |
③

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④ |
地衣類の体は菌類と藻類でできている
●共生藻に頼りっぱなしの共生菌!?
共生藻は,普通の藻類や植物と同じように,日光のエネルギーを使って,水と二酸化炭素から,糖分を作り,これをエネルギー源にして生きています.一方,共生菌は,共生藻から糖アルコールを吸収し,これをエネルギー源にして生きています.つまり共生菌は栄養の面では,共生藻に頼りっぱなしです.
●囚(とら)われの共生藻
共生藻は地衣類の体の中で全く身動きができなくて,窮屈そうです.しかも,栄養を取られっぱなしです.このことから,地衣類の事を,「コントロールされた寄生(Lichen
thallus as controlled parasitism)」と呼び,共生菌の菌糸でできた牢屋に,共生藻が囚われているイラストを描いた専門家もいます.
といっても,やはり共生藻にもメリットがあるのだと考えられています.
●水と無機養分を共生藻に
菌類は,周りから様々な物質を吸収するのが得意な生き物です.アカマツ(植物)がマツタケ(菌根菌)に期待するのもそこで,土の中から養分(例えば,窒素・リン酸・カリ)を効率よく吸収してくれます.地衣類の共生菌は周りから水とともに養分を吸収し,共生藻に与えているのです.
●紫外線から守る
地衣類の体の中で,共生藻は,その上側を覆う菌糸の層によって有害な紫外線から守られています.日光に含まれる紫外線が人間のお肌に大敵なのはよく知られていますが,藻類にとっても有害なのです.これを菌類の層がはね返したり吸収したりして,さえぎってくれます.こうして共生藻は,安全な住処を得ているのです.
●菌類と藻類を別々に取り出して培養
そんな地衣類の体から、菌類と藻類を別々に取り出して培養することができます。
カラタチゴケから分離した菌類を培養すると茶色っぽい塊になり、藻類のほうは緑色です。
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②地衣類の分類、種数
各サイトで 、ハナゴケ、ミヤマハナゴケの説明は、「ハナゴケ科の代表的な地衣類」、「地衣類ハナゴケ科」、「ハナゴケ科に属する淡色の樹枝状地衣」、「ハナゴケ科に属する淡色の樹枝状地衣」地衣類ハナゴケ科の樹状地衣植物」・・となっています。
分類学上存在しない「地衣類」と分類学の「ハナゴケ科」を組み合わせています。分類学に基づいた「菌界ハナゴケ科」、「菌界ハナゴケ科の樹枝状地衣」では、とてもわかりにくいためと思われます。当サイトでも分類学から離れて、「菌類と藻類が共生している地衣類」と記載しました。
また、日本地衣学会では、地衣類独自だった分類体系を、菌類の分類体系に組み込もうとする努力を行ってしているようです。
地衣類の分類
種数
地球上に生育する地衣類(この場合は共生菌)は1万4千種とも2万種とも言われています。このうち1602種が日本から記録されています(Harada et al. 2004)。現在でも多くの新種や日本新産種が報告され続け、その一方では多くの種名が異名として整理されています。このため正確な種数は把握しにくいのですが、日本産の地衣類は、最終的には2千種程度に達するものと予想されます。
子嚢地衣と担子地衣
地衣類の共生菌のほとんどは子嚢菌類で、ごくわずかが担子菌類です。子嚢菌からなる地衣を子嚢地衣類、担子菌からなる地衣を担子地衣類と呼ぶことができます。日本産種を例に取ると、子嚢地衣類は1585種(1602種のうち、98.9%)であるのに対し担子地衣類は5種(0.3%)に過ぎません。また従来は不完全菌類(不完全地衣類)と呼ばれていた12種(0.7%)は、現在では子嚢菌類のアナモルフ(不完全世代)とされるので、これを加えると子嚢地衣類は1597種、全体の99.7%に達することになります。子嚢地衣類は系統的にじつに多様で、日本産地衣類では15目に及びます。この中で地衣類種数として最大の目はチャシブゴケ目Lecanoralesであり、ハナゴケ属、サルオガセ属、ウメノキゴケ類、ムカデゴケ類、キゴケ属など、比較的よく目に付く大型地衣類の大半を含んでいます。
・・・。この考えに基づき、地衣類独自だった分類体系を、菌類の分類体系に組み込もうとする努力が20世紀中ごろから始められ、現在に至っています。
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地衣類独自の分類体系か否かは定かではありませんが、ウィキペディアでは「種類」の項目で地衣類を分類して、ミヤマハナゴケの分類は次のようになっています。
現在の菌界の分類と同じです。
地衣類の種類
チャシブゴケ菌綱-チャシブゴケ目-ハナゴケ科-ハナゴケ属-ミヤマハナゴケ ハナゴケ コアカミゴケ
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③地衣類の体の造り
地衣類は、外形によって葉状地衣類、樹枝状地衣類、固着地衣類に区別されます.
ミヤマハナゴケは円柱状で、樹木のよう立体的に枝分かれする樹枝状地衣類に属します。
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子柄、子器、胞子
ハナゴケ属の樹状部は地衣体とは呼ばず,子柄(しへい)と呼びます。
それは,発生的に見て,子器(しき)の柄であるとの考えからです。
子柄(しへい)と呼ばれる樹状部の断面は、ストローのように中空になっています。内側は、共生藻がない内髄がありますが、比較的固い組織です。その外側に藻類層。一番外側は未分化の皮層があります。
外から見えるのは菌類のみで、共生している藻類は子柄の内部にあり見ることはできないようです。
その胞子(子嚢胞子)をつくる器官は,地衣以外の菌では子嚢果といいます。地衣類の子嚢果が、子器なのです。
地衣類の殖え方
子嚢から飛び出した子嚢胞子は、空中を漂い、やがてどこかに付着あるいは落下します。そこで共生藻となるべき藻類と出会うことができれば、地衣化が起こります。それはやがて地衣体へと成長し、子器をつけることでしょう。
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地衣類の3つの生育形=大まかな形の違いによる分け方です。.
♥樹状(じゅじょう)= だいたい円柱状で、樹木のよう立体的に枝分かれするものもあります。
ハナゴケ属、サルオガセ属、キゴケ属などが代表です。
★葉状(ようじょう)= 葉っぱのように平べったく、小さいものは、鱗片状といいます。
ウメノキゴケ科、ムカデゴケ科などが代表です。
♦ 痂状(かじょう)= 木肌や岩の表面にペンキを塗ったようにピッタリと張り付きます。「固着」と呼ぶこともあります。
チャシブゴケ属、モジゴケ属、アナイボゴケ属などじつに様々です。
地衣類の共生菌は、基本的には胞子で殖えます(ほとんどは子嚢菌類なので、子嚢胞子です)。
胞子は、子器と呼ばれる場所で作られます。
子器の形は科などによって大きく違いますから、分類の良い特徴になります。次のようなタイプがあります。
♥ 裸子器(らしき)= 子嚢胞子が作られる部分(子嚢層)が裸出して(むき出しになって)いて、子器はだいたい皿
あるいは円盤状をしています。真ん中が飛び出して、おまんじゅうのような形をしているもの
も多いです。
ウメノキゴケ科、ハナゴケ属など大形の多くの地衣類の子器はこのタイプです。
2.樹状(じゅじょう)地衣の体の造り
2-1. 横断切片
樹状地衣は,樹状部の断面に属ごとの特徴が表れます.
●ハナゴケの横断切片
子柄(しへい)と呼ばれる樹状部の断面は,ストローのように中空になっています.内側は,共生藻がない内髄がありますが,比較的固い組織です.その外側に藻類層,一番外側は未分化の皮層があります.ハナゴケ属でも,ウグイスゴケなどでは皮層は分化します.

2-2. ハナゴケ属の体の造り
ハナゴケ属の樹状部は地衣体とは呼ばず,子柄(しへい)と呼びます.それは,発生的に見て,子器(しき)の柄であるとの考えからです.図にあるように,多くの種では鱗片状の基本葉体があり,これが地衣体にあたります.体にはこのように葉状の部分がありますが,習慣的に樹状地衣とされています.

そもそも「子器」(しき)という語は,地衣類以外には使いません.地衣類のほとんどが子嚢菌類ですが,その胞子(子嚢胞子)をつくる器官は,地衣以外の菌では子嚢果といいます.地衣類の子嚢果が,子器なのです.
大型地衣(葉状地衣と樹状地衣)は,ほとんどは地衣体の形態だけで同定することが可能です.一方,痂状地衣では,子器がないと,どの仲間なのか全く見当がつかない場合が多いと考えましょう.実体顕微鏡下で観察し,切片を作り生物顕微鏡で観察することも大事になります.
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④地衣類の補足
「地衣類」はなんとなく、すこしわかったような気分である。しかし、更に納得するためには、説明に出てきた各語句などの理解が必要ですが、その項目が多いため選んで記載します。
これで、「地衣類」をわかったような気持ちになり、「地衣類とはなにか」をいったん終了とします。
子嚢菌門(しのうきんもん)は、菌界に属する分類群の一つであり、担子菌門と並ぶ高等菌類である。減数分裂によって生じる胞子を袋(子嚢)の中に作るのを特徴とする。
「ウィキペディアの子嚢菌門 」より引用
チャシブゴケ菌綱(Lecanoromycetes)は、地衣類で最も大きい綱である。子嚢菌門チャワンタケ亜門に属する。チャシブゴケ菌綱の子嚢はのほとんどはその嘴状構造が裂開することにより胞子を放出する[1]。
「ウィキペディアのチャシブゴケ菌綱 」より引用
藻類(そうるい、 英語: algae)とは、酸素発生型光合成を行う生物のうち、主に地上に生息するコケ植物、シダ植物、種子植物を除いたものの総称である。すなわち、真正細菌であるシアノバクテリア(藍藻)から、真核生物で単細胞生物であるもの(珪藻、黄緑藻、渦鞭毛藻など)及び多細胞生物である海藻類(紅藻、褐藻、緑藻)など、進化的に全く異なるグループを含む。酸素非発生型光合成を行う硫黄細菌などの光合成細菌は藻類に含まれない。
「ウィキペディアの藻類 」より引用
藍藻、ラン藻 (らんそう) (英: blue-green algae) は、酸素発生を伴う光合成 (酸素発生型光合成) を行う細菌の一群、またはそれに属する生物のことである。細菌の中には、他にも光合成を行うグループが存在するが (光合成細菌と総称される)、酸素発生型光合成を行う細菌は藍藻のみである。藍藻は、系統的には細菌ドメイン (真正細菌) に属する原核生物であり、他の藻類よりも大腸菌や乳酸菌などに近縁である。そのため、シアノバクテリア (藍色細菌) (英: cyanobacteria) とよばれることも多い
「ウィキペディアの藍藻 」より引用
緑藻 (りょくそう、英: green algae) とは、緑色植物のうち、陸上植物 (コケ植物と維管束植物) を除いたものに対する一般名である。
「ウィキペディアの緑藻 」より引用
高次の地衣類の分類群について見ると、レカノラ目(Lecanorales)に属する地衣類のほとんどがTrebouxia属を共生藻としていた。ウメノキゴケ科の共生藻はすべて
Trebouxia 属であり、ハナゴケ科(Cladoniaceae)では Trebouxia属の中でも特定のグループに摂られていた。また、モジゴケ科(
G raphidceae)の共生藻はPrinzinalagenif eraただ 1種のみであった。このように、分類階級は一致しないものの、地衣類の分類群それぞれに対応する共生藻が存在することが分かつた。
(植物界- 緑色植物亜界--緑藻植物門-トレボキシア藻綱-トレボウクシア目 -トレボウクシア属(Trebouxia 属)
「地衣共生藻の多様性とその共生関係に関する研究」から引用
・厳しい環境下にも地衣類は生えるの?
地衣類は、他の生物が生育できないような厳しい環境下でも生活できます。一年の半分が暗黒で、酷寒の世界となる南極圏や北極圏、そして乾燥、低温、強風などにさらされるヒマラヤやアンデス山地などの高山にも地衣類は多く、何年間も雨の降らない砂漠にも地衣類の群落が見られます。地衣類がこのような過酷な条件下でも生活できるのは、地衣類はもともと乾燥や低温、高温に耐える能力が高いうえ、低温、乾燥などにさらされると呼吸量を極端に少なくして、エネルギーの消耗をおさえたまま、何年間も耐えられる能力をもっているからです
「国立科学博物館-地衣類の探究」から引用
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(4)Lichenは如何にして地衣と翻訳されたか
「地衣類」とは何か、よくわからない。そのように思ってしまう原因の一つがその漢字名です。
「大腸菌」「好熱抗酸菌」「蘚苔類」「脊椎動物」などは、漢字の名前でおぼろげではあるがどのようなものか想像できる。
しかし、「地衣類」を初めて見たとき、これはなんだ、と思ってしまう。「地衣」は日常使われない漢字である。「ちごろも」いや「ちい」か。「羽衣」なら三保の松原を連想するが、「地衣」だけだと何も浮かばない。「地」の「衣」と分解して、コケのようなものかと思う。しかし、これも怪しげである。
「地衣」を辞書で調べると
デジタル大辞泉 では「地衣類(ちい)」。地衣類の別称である。「地衣」のみでは意味を持たない。
精選版 日本国語大辞典では① 地上に敷く敷物。② 地衣植物のこと。
[地上に敷く敷物]では、生物から離れてしまい何も頭に浮かばない。
そこで、デジタル大辞泉の地衣類で、ちい‐るい【地衣類】が「菌類と藻類の共生体」であることを知る。そこから、今まで記載したように、地衣類の探索が始まる。
【地衣類】:菌類と藻類の共生体であるが、単一の生物のようにみえるものの総称。共生菌は子嚢菌(しのうきん)類が多く、共生藻類は緑藻か藍藻(らんそう)。樹や岩の上、地上に生育し、極地や高山でもよく育つ。ウメノキゴケ・チズゴケ・イワタケ・リトマスゴケなど。地衣植物。地衣。
以上の経緯から、「lichen」の訳語を何故「地衣」にしたか興味を持った。しかし、「地衣類」のこれまで現れた解説サイトでは訳語に関する記載は一切ない。通常は訳語に関する情報がないのが普通であるため、探索をあきらめかけた時、検索語は忘れたがが、次のサイトが出てきた。
「地衣の名物学的研究」 「 Lichenは如何にして地衣と翻訳されたか」
「地衣の名物学的研究」は引用文献が250件を超す大論文で、私が求めていたことをさらに発展した力作です。しかし、何故か、著者名がない。 「 Lichenは如何にして地衣と翻訳されたか」は、「科学史研究」の論文で、同じ内容ですので、両方の著者は久保 輝幸氏と思います。所属 :浙江工商大学東方語言与哲学学院 (2019時点)
簡単に紹介します。
「中国の李善蘭とロンドン伝導 会が派遣した二人の宣教師 (A. WilliamsonとJ. Edkins) が、『植物学』を清後期(1858)に上海で翻訳出版した。その中で、「lichen」は「地衣」と漢訳された。」
「当『植物学』は日本で、1867年に初めて足利求道館から翻刻された。田中芳男「垤甘度爾列氏植物自然分科表」(1872) や『植学訳筌』(1874) にライケンの訳語として「地衣」が採用され、現代まで標準和名として定着している。」
「1888年に三好は本草書に記載された地衣をコケ植物とみなし、ライケン (Lichen)の訳語の「地衣」という訳語を不適切とした。さらにライケンの新訳語として「寄藻菌」を用いること
を提唱する。」
この時に提案された「寄藻菌」が適切な訳語と思いますが、残念ながら採用されなかったので、現在、多くの人が「地衣」に戸惑ってしまうことになります。このコラムの出発点もこの不可解な「地衣類」です。
地衣の名物学的研究
結言
本稿は、現在の日本・中国・韓国でもライケン (Lichen)の訳語として用いられる「地衣」および関連語彙について、中国の歴代文献における記載を中心に、名物学的考
察を主な目的に研究したものである。当結果は年代順に以下のように総括できる。
(中略)
唐が滅んで五代十国の時代に入ると、『日華子本草』(10世紀)に「地衣」という植物が記載された。『日華子本草』は「地衣」を「苔蘚」の一種であると する。むろん「苔蘚」とは現在のコケ植物に該当する表現ではなく、ある種の隠花植物をさしていたらしい。一方、当時の韻文で花蕊夫人「宮詞」に代表される ごとく、まだ敷物の意味で「地衣」を用いていた。したがって、当時期の「地衣」には二つの意味があったことになる。
(中略)
そして西洋近代植物学を最初に中国に紹介した書こそ、李善蘭とロンドン伝導 会が派遣した二人の宣教師 (A. WilliamsonとJ. Edkins)
による『植物学』(1858)だった。古代ギリシャの『De Materia Medica Libriquinque』から1900年近くも歳月を経たライケンは、当『植物学』において「地衣」と漢訳された。「地衣」という語句自身もまた、
1600年前後の歳月を経てライケンの訳語に使用され、いずれも長い歴史のある語句だった。
当『植物学』は日本で、1867年に初めて足利求道館から翻刻された。田中芳男「垤甘度爾列氏植物自然分科表」(1872) や『植学訳筌』(1874) にライケンの訳語として「地衣」が採用され、現代まで標準和名として定着している。現在の中国・韓国でもライケンに「地衣」の漢字表記を用いるのは、恐ら く当経緯と関連するだろう。他方、『植物学』渡来以前の日本で、ライケンの音写訳語として「利仙」「利鮮」が存在したこと、「地衣」は19世紀初頭からセ ン綱 (Musci) 植物に相当する名称になったことも明らかにし得た。
こうした1700年におよぶ「地衣」の語史からみるならば、ライケンの訳語とされた期間は150年にも満たない。しかしながら現在の「地衣」という語句 は、西洋植物学のライケンという伝統を継承していると同時に、漢字文化を如実に継承していた側面も研究では明らかにし得た。
1888年に三好は本草書に記載された地衣をコケ植物とみなし、ライケン (Lichen)の訳語の「地衣」という訳語を不適切とした。さらにライケンの新訳語として「寄藻菌」を用いること
を提唱する。
他方、三好以降も下記の研究者が、地衣 に対して同様の指摘をしている。
牧野富太郎
地衣草ハ必ズシモ一種ノ植物デハナク、地面ニ平布シテ生活スル緑苔ナドノ総名デアル。中ニハ蘚類モアレバ苔類モアル、又淡水藻類モ交ハリ生ズル、又下等ナ
菌類モ雑生スル事ガアラウ。今日ノ植物学者ハLichenヲ地衣ト定メ居レドモ、是レハ、必ズシモ正確ナ対訳デハナイ。
Lichenは如何にして地衣と翻訳されたか
How Lichen Was Translated as Chii
久保 輝幸
KUBO Teruyuki
中国科学院自然科学史研究所
抄録
Chii, the Japanese term for 'lichen', is widely used in contemporary East Asia. However, precisely when and by whom this term was first used to refer to lichen is not known. In addition, Japanese botanists from the 1880s to the 1950s had doubts regarding whether Chii was an accurate translation of lichen, given that Chii originally referred to moss that grows on the ground, whereas most species of lichens grow on barks of trees or on rocks. In this paper, the author shows that Li Shanlan and A. Williamson et al., in the late Qing dynasty of China, first used the term Chii to refer to lichen in Zhiwuxue, published in 1858. In Japan, Tanaka Yoshio, who was influenced by Zhiwuxue, first used the term Chii in 1872. However, further investigations led to the discovery that ITO Keisuke translated lichen as Risen in 1829. In 1836, UDAGA WA Yoan also translated lichen as Risen by using a different kanji (Chinese character) to represent sen. In 1888, in his article, MIYOSHI Manabu suggested a new equivalent term, Kisoukin, to refer to lichen (algae-parasitized fungi). In the article, he proposed the term Kyosei as the Japanese translation of symbiosis. Ever since the late 1880s, Kyosei has been used as the Japanese biological term for symbiosis.
科学史研究. 第II期 科学史研究. 第II期 48(249), 1-10, 2009-03-25 日本科学史学会
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富士山御中道のミヤコハナゴケ 完
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