| 扇山は2011.2.7に登り、晴れていたが霞の中の富士山を眺めた。今回はより鮮明度が高い富士山を眺めることを目的とした。もうひとつの目的は、前から気になっていた葛飾北斎「富嶽三十六景 甲州犬目峠」の富士山を眺めることです。最初、下山した後に北斎の犬目峠の富士山を眺めようとしたが、青い空の下の犬目バス停に降りたときに何故か気持ちが変わった。甲州街扇山登山の前に甲州街道を歩くことにした。 「富嶽三十六景 甲州犬目峠」 新緑のなだらかな甲州道中の峠道を旅人や馬子が登っていく。摺り残して表現した雲は坂道と富士の間に距離を作り出し、眼下に渓谷があることをうかがわせる。鋭角の富士と峠の斜め線による簡潔な構図によって、明るくのどかな景色が広がっている。 ![]() |
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| ■今回のコース:紫色の線で示しました。 JR中央本線四方津駅からバスで犬目到着。宝生寺などを見学しながら甲州街道を歩き、一里塚から少し進んだ富士山展望地まで行き、白馬登山口まで戻る。 ・白馬登山口-扇山山頂:1時間39分(休憩10分含む) ・扇山-犬目丸:35分 犬目丸-四方津駅:2時間7分(休憩5分) ![]() |
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■6:32 小田急江ノ島線長後駅のホームからの富士山。 小田急江ノ島線の藤沢駅から大和駅までの間で、富士山が見えます。大和駅を過ぎると富士山は丹沢の大山の後ろに姿を隠します。山歩きの時、長後駅が出発点となる場合が多い。空気の澄み具合で、このホームからの富士山見え方が変わるので、目的地での富士山の見え方を予測する。今日は期待が持てる見え方です。 ![]() ■8:24 中央本線四方津駅横のバス停から。雲ひとつない青い空です。バスに乗って扇山ふもとの犬目に行きます。土曜日ですので、団体がおり、バスは満杯。 ![]() ■8:24-8:56 四方津駅から犬目バス停までバス32分。 ![]() ■8:59 犬目バス停からの眺め。 右(東)に行くと犬目宿-野田尻宿で、犬目宿付近に北斎が「富嶽三十六景 甲州 犬目峠」を描いたといわれている「遠見」がある。そこからの富士山は写真で見ているため、今回は犬目バス停から下鳥沢宿の間で富士山を眺めるため、左(西)に進む。 白土三平の未完の名作「カムイ伝」の愛読者ですので、「犬目」は魅力ある名前です。忍者カムイの師匠の名前が「赤目」、舞台となる日置藩一帯の部落を仕切っている非人頭が「横目」、「・・目」はカムイ伝の世界です。「犬目」はカムイ伝と一切関係がないが、勝手にカムイ伝、北斎の富士山という歴史ミステリーの世界にはいり歩きます。 (蛇足の補足:三重県に赤目町があり、修験道や忍者の修行場といわれている赤目四十八滝があります。題名が魅力的な車谷 長吉著「赤目四十八瀧心中未遂」があります。) ![]() ■8:59 若い登山者が多い。左の紫の方は、引率者の相棒さん。相棒さんの後についていきます。 ![]() ■9:01 『「龍澤山」「寶勝寺」「一本彫りの石像 観音さまから見える富士は絵になります どうぞご覧ください』の看板。ここで富士山が見れるようです。 「空」の丸石。仏教の真髄である「空」、「般若心経」に出てくる「色即是空 空即是色」の「空」です。何種類かの解説文を読んで、わかったような気分になるが、まったく理解できない「空」が球体の石に刻まれている。「空」は「球」かと、わけがわからないところに感心して階段を登ります。 ![]() ■9:03 寶勝寺は工事中ですが、左側に観音さまがいます。 ![]() ■9:04 大月慈母観音と富士山。 右手に煩悩を消し去りあらゆる顧いを叶えてくれるといわれる功徳水が入っている水瓶を持つ慈母観音と一切の迷いごとを消し去り元気を与えてくれる富士山を同時に眺めることができる貴重な場所です。 『葛飾北斎「富嶽三十六景」歌川広重「不二三十六計景」の富士山はこの辺りから描いたと言われております。・・・・』の表示があります。 2008年にきた時、この時バスは犬目で貸しきり状態になり、親切な運転手が登山道入り口近くまで送ってくれた。そのとき、登山口近くで富士山が見え「この辺りが北斎が描いたというところ」と言っていたと記憶している。北斎が描いたといわれている場所はかなりあるようで、地元でも確定されていないようです。 「この犬目慈母観音は2004年夏、多くの寄進により建立。頭から足まで一本の石で彫られています」と書いてあります。 ![]() ![]() ■9:04 煩悩を消し去って大月慈母観音の横から富士山を眺めます。電線が画面に入るのが難点です。 ![]() ■9:05 木の間から眺める紅葉と富士山がすばらしい。 ![]() ■9:09 下鳥沢宿に向けて甲州街道を進みます。ここの右側に鳥居がありますが、白馬不動尊登山口になります。この先の甲州街道で富士山の写真を撮ったあと、ここに戻り扇山登山を開始しました。 ![]() ■9:10 上野原町教育委員会の甲州街道史跡案内図。 北斎の描いた「犬目峠」は記載されていません。 登山地図、ネット検索でも出てこないので、現時点では犬目地区には「犬目峠」は存在しないようです。 北斎と広重が描いた「犬目峠」はどこにある。 ![]() ![]() ■9:17 「君恋の宿」君恋温泉の宿です。戻ってから行くことにして先に進みます。 ![]() ■9:20 恋塚一里塚。一里(四キロメ−トル)ごとに築かれた一里塚。恋塚一里塚は江戸日本橋から二十一里。 ![]() ![]() ■9:27 ついに出てきました。今回の目的である甲州街道からの富士山。 右側が九鬼山、九鬼山の尾根の上に富士山がおり、その下に杓子山と鹿留山、その左側に高畑山と倉岳山 倉岳山の左後ろに丹沢の大室山。 ![]() ![]() ■9:27 甲州街道からの富士山。この富士山を見て、甲州街道を歩く旅人たちは喜んだと思います。 ![]() ■9:27 甲州街道からの富士山。九鬼山の尾根の凹部に鎮座する富士山。鹿留山、杓子山も頭を出しています。 ■9:27 甲州街道からの富士山。手前の山の紅葉に合わせて、富士も雪化粧を始めています。 ![]() ■9:41 甲州街道の富士を見たので、来た道を戻ります。山の紅葉が美しい。 ![]() ■9:50 君恋の宿の看板があった向いの道に入ります。 ![]() ■9:52 「君恋温泉」の看板の向かいに一軒の宿があります。普通の民家のような宿です。宿の前から富士山が見えます。 ![]() ■9:54 甲州街道の富士より宝永山がはっきり見えています。 ![]() ■9:55 少し進むと、九鬼山が見えなくなりますが、電信柱がなくなります。 ここで甲州街道の富士山は最後ですが、北斎の描いた「甲州犬目峠」の富士山を眺めることはできませんでした。「甲州犬目峠」の富士山と甲州街道からの富士山はまったく異なります。おにぎりの時間に再考。
■10:00 9:09に通過した「白馬不動尊」の鳥居。左の表示板に「白滝不動 扇山頂上」とあります。犬目に着いてから一時間甲州街道を歩いた後、扇山登山開始です。10時頃から富士山方向の霞が強まってくるから、扇山で富士山を眺めるという目的にとって、頂上に立つのが一時間遅れるのは辛いことです。12時前に着くように少し急ぎます。 ![]() ■10:01 茅葺の民家がありました。 ![]() ■10:13 山地図では「大滝不動」。この先に滝があります。 ![]() ■10:15 「白滝」か「大滝」か「不動の滝」か。 ![]() ■10:20 扇山頂上に進みます ![]() ■10:46 登る途中で富士山が見えてきました。 ![]() ■10:50 見晴台分岐。右に行くと見晴台(犬目丸)、左に行くと扇山山頂。 ![]() ■11:09 この辺りの紅葉が美しい。 ![]() ■11:16 山谷分岐。左に行くと山谷経由で鳥沢駅、隣に90分で鳥沢駅で途中のエコハウスから富士山が見えますとの看板。 ![]() ■11:18 晩秋の雰囲気に変わってきます。 ![]() ■11:33 木々の葉がすべてなくなっています。登るごとに季節が進みます。 ![]() ■11:39 扇山山頂。大きな広場があり多くの人がくつろいでおり、殆どの人が左側を眺めている。左側に富士山がいます。 ![]() ■11:41 扇山山頂。富士山方向の樹木が伐採されて見晴らしがよく、展望が良いベンチ、草地には多くの登山者がいます。おにぎりを食べながら富士山を眺める人、昼食を作っているグループ、和やかに話をしている家族連れなどさまざまな人々がくつろいでいます。扇山からの富士山は、楽しげな登山者と共に眺めるのが似合っています。 大月市の「秀麗富嶽十二景 六番山頂 扇山 1138m」の表示板。登山道の表示板は上野原市でしたが、扇山頂上は上野原市と大月市の境にあるため両方の表示板があります。大月市の富嶽十二景で登山道を調べると、今回の犬目(上野原市)からの登山道の案内はなく、鳥沢駅からの登山道となります。 ![]() ■11:45 扇山山頂広場からの富士山(1) 甲州街道では山頂部しか見えなかった鹿留山・杓子山の山体が富士山の下にあります。その右の倉見山は樹木で隠れています。その下に九鬼山、ちょうど富士山の真下になります。富士山の左側に、樹木の後ろになりますが、甲州街道では見えなかった御正体山が見えます ![]() ■11:45 扇山山頂広場からの富士山(2) 壁紙用(WUXGA 1920×1200) ■11:46 扇山山頂広場からの富士山(3) ■11:46 扇山山頂広場からの富士山(4)宝永山も見えています。 ![]() ■11:46 扇山山頂広場からの富士山(5) かなり霞んでいますが、かすかに冠雪部、山腹の陰影が見られます。 ![]() |
今回甲州街道で眺めた富士山は、北斎の「甲州犬目峠」の富士山とまったく異なる富士山です。その富士山の違いに驚き、描いた地名をわざわざ入れた「富嶽三十六景」とはどのような作品であるかと興味がわいた。「甲州犬目峠」についてはコラムにまとめたが、その要点を以下に記載します。葛飾北斎の富嶽三十六景「甲州犬目峠」の謎富嶽三十六景「甲州犬目峠」「富嶽三十六景 - Wikipedia」より引用
![]() この作品が描かれた場所での富士山を眺めるため扇山登山の前に甲州街道の犬目宿付近を歩いた。しかし、観光用の地図にも案内板にも「犬目峠」という地名の場所はない。ネットの地図、登山用地図にも、「犬目峠」の記載は無い。
安藤広重も「冨士三十六景 甲斐犬目峠」、「不二三十六景 甲斐犬目峠」の二作品を描き、「甲州日記」に「犬目峠の宿、しからきといふ茶屋に休」と記述している。 江戸時代の浮世絵の二大巨匠の北斎と広重の描いた「犬目峠」が現在地名として残っていない。しかも犬目峠はこの辺りですという確かな情報も残されていない。北斎と広重が描いたと記念碑を建てるほどの出来事では無かったようです。 北斎は、1999年のアメリカの雑誌である『ライフ』の「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」で、日本人として唯一86位にランクインした日本人ですが、江戸時代の浮世絵師の影響力はそのくらいのものかと認識しました。 犬目宿から下鳥沢宿を歩き、その途中で君恋温泉付近で眺めた富士山を示します。 、『葛飾北斎「富嶽三十六景」歌川広重「不二三十六計景」の富士山はこの辺りから描いたと言われております。・・・・』の表示がある「龍澤山」「寶勝寺」からの富士山もほぼ同じです。 また工藤孝雄著「平成富嶽百景」に『旧甲州街道の一隅にある「遠見」と呼ばれる高台からの富士。地元では、北斎が描いた場所だと伝えられているが、そこからの風景は「甲州犬目峠」の構図とかけ離れていた。』という記載と富士山の写真があるが、その富士山もほぼ同じです。これより、甲州街道犬目宿付近からの富士山の景観はこのようなものとおもえる。
甲州街道の君恋温泉付近からの富士山
![]() 表1に、北斎「甲州犬目」の富士山と甲州街道からの富士山の違いを示します。その違いに驚きます。これが○○から眺めた富士山ですと述べる際の特徴がひとつも一致しません。大本は一致して、北斎がいろんな所からの富士山を付け加えたかというレベルではない。一致するのは富士山が見えているところだけです。
表1 北斎「甲州犬目」の富士山と甲州街道からの富士山の違い
何ゆえ北斎は「甲州犬目峠」にこのような実際に見える富士山と異なる富士山を描いたか? とんとわからない。この「甲州犬目峠」の謎を解くために「富嶽三十六景」探索の長い旅が始まりました。いまだ、旅の途中です。 |





























