1.北斎の逆さ富士 |
北斎の逆さ富士としては「富嶽三十六景」の「甲州三坂水面」が有名である。「三坂」は「御坂」で、御坂山地に有る御坂峠を示している。(この御坂峠は御坂山の東にある旧御坂峠と私は推察しています)湖面に映る逆さ富士は線対称で富士であるが、「甲州三坂水面」では点対称になっている。この点対象の逆さ富士が北斎の特徴であり、富嶽百景・三編の「蛇追沼の富士」でも点対称の逆さ藤を描いている。また、この「甲州三坂水面」では、実像の富士が夏の富士であるが水面小富士は関節下富士になっており、自由な構図と虚構の世界を楽しんでいる。 ![]() さらに、この点対象の富士を「富嶽三十六景」の「青山円座の松」では、隠し富士として描いている。一見したところでは気がつきにくいが、よく見ると富士山の左下に、青山円座の松と樹木と屋根で逆さ富士を形成している。この逆さ富士を画面に造るために、芝・増上寺の円座の松を、青山・龍岩寺の松として描いていると指摘している。 (有泉豊明著「葛飾北斎 富嶽三十六景を読む」平成26年 (株)目の眼発行から) 他の解説では、この逆さ富士について書かれてはいないが、私も北斎が意図的に逆さ富士を隠したと思える。冠雪した富士山を水面に描く画家ですから。この隠し富士により、この作品を見る楽しさも倍増している。 ![]() 2.隠し富士のある景観 (1)新道峠第二展望台からの富士山 2014.12.27 北斎の逆さ富士が隠れています。実際の撮影時は意識していませんでしたが、山歩き記をまとめている時に見つけました。数個の山の稜線と河口湖の水面が逆さ富士を形成しています。まずは、ジーーと眺めて逆さ富士を見つけてください。 ![]() 赤い線が逆さ富士 ![]() (2)御坂峠天下茶屋付近からの富士山 2014.11.16 濃淡は逆ですが実像の富士と同じように冠雪した富士山が明確な形で右下にあります。逆さ富士としては少し小さいため、相似形の構図を楽しむことになります。 ![]() (3)箱根外輪山の芦ノ湖展望公園付近からの富士山 2014.10.14 左側が弱いが逆さ富士になってます。しかし、逆さ富士の山肌が煩雑です。北斎は大和絵伝統のすやり霞(様式化した霞・雲)を使って簡明化してますが、実景では上の二枚のように湖が必要と思いました。 ![]() 手持ちの画像では、そのほかに逆さ富士といえるものはありませんでした。しかし、これから富士山を眺める時、写真の構図を決める時の楽しみが増えました。 |