3 「甲州三坂水面」の富士山、実像は男富士、虚像は女富士 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3-1 「甲州三坂水面」の富士山は、男女の性別的な視点から描いています。 北斎は、時間的な多視点、空間的な多視点とともに、男女の性別的な視点からも「甲州三坂水面」富士山を描いています。
「富士山は男か女か」という論争は、昔から現在に至るまで続いています。 これらの江戸時代の論争に応えて、男富士と女富士を描きました。 「富士山の守護神」、「富士山の祭神」、「富士山そのものがご神体」、「本地垂迹説により大日如来が登場」、「木花開耶姫命は浅間大菩薩である」などなど、論争の観点が多く結論は難しいようです。しかし、江戸時代の人々は、神として富士山をとらえ、時には男性として時には女性として富士山を眺めていたと思います。また「呉服屋を毎日のぞく咲耶姫」と江戸時代の川柳ににあるように、祭神も人格化して見ていたようです。 富士山は両性具有の稀有な山である、また、富士山そのものを、「ご神体」で中性の山でもあるという記述を、以下に引用します。
3-2 「富嶽三十六景」の男富士と女富士 同一画面で比較すると実像の男富士は内側に凹んだ形状になっており、虚像の女富士は外側に少し凸の部分もあります。
男富士は山体山頂とも荒々しく力強い。女富士は山体山頂とも丸くたおやかです。 ![]() 「甲州三坂水面」の男富士と女富士 「甲州三坂水面」の富士山の実像と虚像をコンパスを用いて、円弧で描くと図50Zのようになります。実像の男富士に比べ、の円弧の曲率半径は、虚像の女富士かなり大きくなってます。
富嶽三十六景を男富士、女富士で分類するのはとても難しい。中性の富士も加えて、当方なりの分類を行った。 (1)「富嶽三十六景」の男富士 ■ 山下白雨 「甲州三坂水面」の男富士とほぼ同じ山体の形状で、多数の沢は荒々しく、山体から鋭角の突起が出てます。更に入道雲と雷鳴が聞こえるような雷が発生しています。男富士の代表です。
■甲州伊沢暁 「甲州三坂水面」の男富士とほぼ同じ山体の形状で、山体は黒々として、左側のすそ野は異様な突起で描かれている。
■甲州三嶌越 「甲州三坂水面」の男富士の横幅を85%に縮小するとほぼ同じ山体の形状になり、山体から鋭角の突起が出てます。山体から鋭角の突起が出ているのは、「山下白雨」と「甲州三嶌越」だけです。
(2)「富嶽三十六景」の女富士 ■甲州三嶌越 山頂部が丸く、山体はまろやかで、全体にたおやかな富士の姿です。心和ませる女富士です。 「甲州三坂水面」の男富士の横幅を85%に縮小するとほぼ同じ山体の形状になります。
■金谷ノ不二 山体の形状はまろやかで、「甲州三坂水面」の女富士の横幅を74%%に縮小するとほぼ同じ山体の形状になります。冠雪状態も似ています。
(3)「富嶽三十六景」の中性の富士 ■江都駿河町三井見世略図 ■神奈川沖浪裏 ■東海道江尻田子の浦略図 ■相州日七里濱 これらは雪化粧した美人の富士山で女富士、円形の曲線が形成する内側に反った秀麗な男富士、両者合わせてて中性の富士
上図は富嶽三十六景- Wikipediaより引用 ■凱風快晴 凱風快晴の富士山の性別判定は難しい。 夏の岩肌の険しい沢の残雪は男富士、山頂下の左側の膨らみがたおやか山体を形成して女富士、両者合わせてて中性の富士
「凱風快晴」の山頂下の左側の膨らみ 山頂下の左側の膨らみが凱風快晴の富士山山体の最大の特徴です。この膨らみのため秀麗な富士と言い難く、何故膨らませたのかという疑問のため、ずーと眺めていても飽きない富士山になっています。江戸期までの伝統的な秀麗な富士山では画狂老人の前北斎為一は満足しなかったと思っています。 北斎以前の画家の富士山にこの膨らみのある山体はありません。 富士山同士を重ね合わせてその山体の違いを調べます。富士山の横幅を調整して富士山山頂部の横幅と山体部の傾斜を合わせています。 円山応挙の「富士図」 円山応挙は江戸時代中期~後期の絵師。近現代の京都画壇にまでその系統が続く「円山派」の祖であり、写生を重視した親しみやすい画風が特色。すそ野がきれいに伸びた秀麗な富士山で、山腹に膨らみはありません。
宋 紫石 「富嶽図」 宋紫石は江戸時代中期の画家。沈南蘋の画風を江戸で広め当時の画壇に大きな影響を与えた。「富嶽図」は伊豆国田子浦からの富士山を描いた。 宋 紫石「富嶽図」は変形無しで「凱風快晴」の富士山の形状ととほぼ一致します。「凱風快晴」の元絵と言われてもおかしくない作品です。しかし、山頂下の左側の膨らみがあるため「富嶽図」と異なる富士山になっています。
北斎「甲州三坂水面」の男富士 「甲州三坂水面」の男富士は内側に反り、凱風快晴の富士は外側に膨れます
北斎「東海道江尻田子の浦略啚」 北斎以前の伝統的な秀麗な「東海道江尻田子の浦略啚」の富士山との比較。山頂下の左側の膨らみが異なります。
北斎「相州梅澤左」 山体の左側が膨らむ富士山はもう一枚「相州梅澤左」があります。「相州梅澤左」では山頂下よりさらに下側の山腹の左側に膨らみがあります。 そのため、「凱風快晴」の富士山とかなり異なるっ富士山になっています。ずんぐりむっくりの男富士か、とてもまろやかな女富士か見る人により違ってきそうです。
![]() 1 「甲州三坂水面」の男富士と女富士の山頂 実像の男富士に近い絵画作品
北斎以前には三峰構造が多いが、三峰構造で尖っ峰の三峰構造は無い。尖った峰を持つ山頂部は、宋紫石や司馬江漢の写実的な作品になるが、平坦な峰構造となる。
虚像の女富士に近い絵画作品
一峰の山頂部は無く、三峰以上です。三峰だと、峰自体はおのおの丸い峰です。狩野山雪の「富士三保松原屏風」では、峰と峰が接近して境界線を除くと、一峰の丸い峰になりそうです。
2 「甲州三坂水面」の冨士山頂部と各方位からの富士山頂部」
![]() 3 女富士、男富士、中性の富士山 女富士 甲州犬目峠 木花開耶姫命 江戸からの長旅の富士講の旅人を木花咲耶姫が温かく迎えます。 ![]()
男富士 山下白雨 役優婆塞 富士山とは厳しい人生の修業の場であると役優婆塞入っています。 ![]()
中性の富士山 凱風快晴 木花開耶姫命 役優婆塞 ![]() |
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