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2018年に書いた最初の原稿は現在のWikipediaの内容と異なっています。タマゴタケの学名が、Amanita hemibapha から Amanita caesareoidesに変わっています。また、さらに変化が有りました。学名がこんな短期間に変わるとは珍しいと思い、タマゴダケの和名と学名について勉強しました。これが意外と難しいい。



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タマゴダケの従来の学名は A. hemibapha だったが、近年の遺伝子レベルでの研究により Amanita caesareoides 変更された。




201811.39 タマゴタケ - Wikipediaより引用

タマゴタケ(卵茸、Amanita hemibapha (Berk.& Br.) Sacc)はハラタケ目テングタケ科テングタケ属のテングタケ亜属タマゴタケ節に分類されるキノコの一種。








2024.5.11タマゴタケ - Wikipediaより引用



タマゴタケ(卵茸、学名: Amanita caesareoides)は、ハラタケ目テングタケ科テングタケ属のテングタケ亜属タマゴタケ節に分類される中型から大型のキノコの一種。

この従来の学名は A. hemibapha (Berk.& Br.) Sacc. だったが、近年の遺伝子レベルでの研究により Amanita caesareoides に変更された[4]。ただし、遺伝子解析及び胞子の分析から、日本産のタマゴタケには外見上見分けがつかない未記載の隠蔽種(w:Species complex参照)が存在することが判明している[5]


[4]Endo N, Gisusi S, Fukuda M, Yamada A(2013)In vitro mycorrhization and acclimatization of Amanita caesareoides and its relatives on Pinus densiflora. Mycorrhiza 23: 303-315.

[5]古平美友紀; 遠藤直樹; 福田正樹; 山田明義「日本産タマゴタケの分類学的再検討」『日本菌学会第62回大会講演要旨集』日本菌学会第62回大会セッションID: B-07、2018年。
タマゴタケの分類
界 : 菌界 Fungus
門 : 担子菌門 Basidiomycota
綱 : 真正担子菌綱 Homobasidiomycetes
目 : ハラタケ目 Agaricales
科 : テングタケ科 Amanitaceae
属 : テングタケ属 Amanita
亜属 : テングタケ亜属 Subgenus Amanita
節 : タマゴタケ節 Section Caesareae
種 : タマゴタケ A. caesareoides
  学名
  Amanita caesareoides
Lyu. N. Vassilieva, 1950
  和名
  タマゴタケ




タマゴタケの和名と学名の変遷を調べるにはこれを読めばよいという素晴らしいサイトが有りました。ここでは、このサイトをもとに短くまとめました。

     新種サトタマゴタケの論文を分解する(タマゴタケの学名の変遷) | きのこびと



「タマゴタケ」の和名と学名の変遷

和名
学名
 命名者 掲載誌など
1800年 (明治33年)
以前
タマゴタケは
存在しない (?)
   
1800年 (明治33年) オオベニタケ  Amanita caesaria

アマニタ・カエサレオイデス
白井光太郎が提出したオオベニタケをドイツの菌学者Hennings(ヘニング)がAmanita caesaria と同定。学術誌『Hedwigia』に記載
1913年(大正2年)  タマゴタケ   Amanita caesarea 川村清一の「日本菌類図譜」でその名前をタマゴタケとして発表。「タマゴタケの歴史」が始まった。
1975年(昭和50年)  タマゴタケ   Amanita hemibapha

アマニタ・ヘミバファ
本郷次雄によって「タマゴタケ」は Amanita hemibapha と同定。
 2015年(平成27年)   タマゴタケ Amanita caesareoides

アマニタ・カエサレオイデス
遠藤直樹によりタマゴタケは Amanita caesareoides と同定
2024年(令和6年)  タマゴタケ

サトタマゴタケ
 (新種)
Amanita caesareoides

Amanita satotamagodake
アマニタ・サトタマゴタケ

今まで「タマゴタケ」と呼ばれていたものが、実は2つの種類であって一方はタマゴタケでもう一方がサトタマゴタケとなった。








(1)1800年 オオベニタケ Amanita caesarea

タマゴタケは当初、1800年(明治33年)Hennings(ヘニング)によって「オオベニタケ」という一般名でAmanita caesareaとして同定されました。すなわち、1800年以前にはタマゴタケという名前は存在していなかったのです。植物学者・菌類学者の白井光太郎博士がスケッチした絵を元に来日していたP.ヘニングが同定したものであると考えられます。和名に関しては白井博士が書き加えたと書いてありますので、オオベニタケというのは白井博士によるものなのでしょう。

「Fleischige Pilze aus Japan」(日本産のカサのあるキノコ類)というドイツ語のタイトルを付けれた小冊子?の中にキノコの一覧が書かれていて、その中にこの様な記述があります。

「Amanita caesaria Scop. Cam. II. p. 419. Nom. Jap. Obenitake. Nikko.」


この時のタマゴタケの学名は「Amanita caesare」、読みは「アマニタ・カエサレ」と呼びます。

「Amanita」は「テングタケ属」で、ハラタケ目テングタケ科の属の一つです。
「caesar」はローマ皇帝だったガイウス・ユリウス・カエサル(Gaius Iulius Caesar)から来ています。
学名「Amanita caesarea」-アマニタ・カエサレアというの、セイヨウタマゴタケと呼ばれているキノコです。「皇帝のキノコの異名を持ちます。」


ガイウス・ユリウス・カエサル Amanita caesare アマニタ・カエサレ セイヨウタマゴタケ
カエサル像 セイヨウタマゴタケ セイヨウタマゴタケ
紀元前100年 - 紀元前44年、共和政ローマ末期の政務官であり、文筆家。
ガイウス・ユリウス・カエサル - Wikipedia
ハラタケ目テングタケ科テングタケ属テングタケ亜属タマゴタケ節のキノコ。

セイヨウタマゴタケ - Wikipedia


(2)1913年  タマゴタケ Amanita caesarea

タマゴタケが、「タマゴタケ」として初お披露目したのは川村清一博士の「日本菌類図譜」でその名前が発表されてからです。Amanita caesareaとして「たまごたけ」の和名が付けられているのがわかります。1913年(大正2年)の事です。
ここから「タマゴタケの歴史」が始まったと言って過言ではありません。

川村博士は幼菌の頃の卵に包まれた姿、また、幼菌から傘をちょこっと出した愛らしさから「タマゴ」という名にふさわしいと思われたのでしょう。

また、オオベニタケと名前が似ているコベニタケは ベニタケ属 Russulaです。オオベニタケとコベニタケが異なる属にいるのはいけないと思い、テングタケ属の学名Amanitaにあう和名に変えたかもしれません。(筆者推察)



序言


日本菌類図譜 第1輯 著者 農商務省山林局 編 出版者 農商務省山林局 出版年月日大正1-3

日本菌類図譜 第1輯 - 国立国会図書館デジタルコレクション




タマゴタケ説明文



日本菌類図譜 第2輯 著者 農商務省山林局 編 出版者 農商務省山林局 出版年月日大正1-3

日本菌類図譜 第2輯 - 国立国会図書館デジタルコレクション



タマゴタケの図

日本菌類図譜 第2輯 - 国立国会図書館デジタルコレクション





川村清一が原図を描いた1929年(昭和4年)の『日本菌類図説』の図版では彩色されたタマゴタケが掲載されています。見事な描写力です。



 タマゴダケ  コベニタケ>  ベニテングタケ
タマゴダケ  属 : テングタケ属 Amanita コベニタケ   属 : ベニタケ属 Russula ベニテングダケ   属 : テングタケ属 Amanita 
川村清一が原図を描いた1929年(昭和4年)の『日本菌類図説』の図版 川村清一の『日本菌類図説』 | NDLイメージバンク | 国立国会図書館より引用  



(3)1975年  タマゴタケ Amanita hemibepha(アマニタ・ヘミバファ)

1975年(昭和50年)、本郷次雄博士によって「タマゴタケ」は Amanita hemibapha と同定されました
1870年(明治3年) M. J. Berkeley によって記載された「IV. On some Species of the Genus Agaricus from Ceylon」中で Amanita hemibapha とA.caesarea との明確な違いが指摘されています
①厚くほとんど条線のない傘 ②鱗片のない太くて詰まった柄 ③より長い胞子
これらの違いにより、タマゴタケはヨーロッパ産の A. caesarea ではなく、スリランカで記載された A. hemibapha であるとしています。


(4)2015年  タマゴタケ Amanita caesareoides

2015年(平成27年)遠藤直樹先生によりタマゴタケは Amanita caesareoides と同定された。
Amanita caesareoides(アマニタ・カエサレオイデス)の「oides」はラテン語で「~に似ている」という意味です。つまり日本語で言うと「カエサル(セイヨウタマゴタケ)に似ている」


形態学的特徴は、模式標本 (レクトタイプ) である A. caesareoides と一致し、A. hemibapha の模式標本 (等模式標本: アイソタイプ) とは一致しませんでした。

また、核リボソームRNA遺伝子内の ITS領域の分子系統解析を行った結果、日本産の「タマゴタケ」は A. caesareoides の模式標本と単一の系統群を形成し、A. caesarea や A. jacksonii に近縁であることが示されました。

一方、形態的に A. hemibapha の模式標本と一致するタイ産の標本は、インド産の標本と同じグループに含まれており、A. caesareoides とは離れた系統群であることが明らかになりました。

以上のことから、日本産のタマゴタケは、A. caesareoides であることが強く支持されます。




(5)2015年  タマゴタケ Amanita caesareoides & サトタマゴタケ Amanita satotamagotake


今まで「タマゴタケ」と呼ばれていたものが、実は2つの種類であって一方はタマゴタケでもう一方がサトタマゴタケとなった。

学名で言えば

タマゴタケ:Amanita caesareoides
サトタマゴタケ:Amanita satotamagotake


信州大学のMiyuki Kodaira等がが発表した18ページの論文[Amanita satotamagotake sp. nov., a cryptic species formerly included inAmanita caesareoides」です。


論文のAbstractに書かれている内容から列挙しますと

①系統解析に於いてITSを考慮しない限り明確に2つのグループに分かれた
②分布はタマゴタケは亜高山性から冷涼な温帯地域でサトタマゴタケは温帯から亜熱帯地域
③担子胞子サイズは重なるもののサトタマゴタケの方が小さい
④栄養寒天培地上ではタマゴタケのみ菌糸体の成長がみられた
この4点である。


この4つの中に我々素人でも2種の判断が可能な要素が一つだけある。それが2の分布の違いだ。その判断するサイトも紹介しています。

しかし、山の中で見つけた時は、二種を識別できないので、「タマゴタケ」見つけたと声をあげることになります。





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