十国峠(日金山)あれこれ









十国峠の読み方







地名はだれが決めるのか



日本の地形、地名の管理元と思われる国土地理院のHPに、以下の記載が有ります。
地名及びその読み方は、所属する市町村が決めるようです。





Q2.19:地名は,誰が決めるのですか?

A2.19

行政名や居住地名は,各市町村で決めています.



Q2.20:地名(山の名前)の読み方を教えてください

A2.20

行政名や居住地名(山の名前を含む)は,各市町村で決めていますので,該当の市町村にお問い合わせください.



なお,我が国の行政,居住,自然,海底地形等の標準化された地名情報については,「地名集日本」(2007)に,まとめられていますのでご覧ください.






実際に行われている「十国峠」の読み方を以下に示します。



(1)「じゅっこくとうげ」と表記。



❶十国峠のある熱海市の熱海市観光協会の公式観光サイトでは十国峠 (じゅっこくとうげ)




❷十国峠のある函南町のHPでは、十国峠の読み方は記載されていません。

函南町にある十国峠ケーブルカーの十国峠株式会社のHPでは「View from JUKKOKUTOUGE-十国峠からの景観」と、「じゅっこくとうげ」です。
[Tweets from@jukkokupass]で「じゅっこくとうげ」です。






❸十国峠株式会社が設置したと思われる頂上の表示横柱も「JUKKOKU RIDGE」で「じゅっこくとうげ」です。
峠がpassではなくRIDGEです。英和辞典ではどちらも「峠」です。




十国峠と富士山 十国峠柱の文字


ridge:山の背、尾根、分水嶺、隆起(線)、鼻梁(びりよう)、うね、あぜ、(屋根の)棟(むね)、(高)気圧の峰 Weblio英和辞書
峠:crisis; pass; ridge Weblio和英辞書 




❹函南町観光協会の情報MAP「ぐるり函南」では「「十国峠 JUKKOKU RIDGE」」の表示柱の写真を載せて「十国峠 じっこくとうげ」と書いてます。
函南町観光協会でお読み方の統一が必要です。(函南町関連のためあえてこちらに掲載)





(2)「じっこくとうげ」と表記



❶辞書、百科事典類は「じっこくとうげ」です。







・広辞苑第六版(2008年新村出編)

・大辞林、大辞泉、新辞林も「じっこくとうげ」 広辞苑無料検索




・日本大百科全書(ニッポニカ)、百科事典マイペディア、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典:精選版 、日本国語大辞典も「じっこくとうげ」


  コトバンク より引用



❷インターネットのGoogle検索では「じっこくとうげ」」  十国峠 - Google 検索


他の人はこちらも質問

十国峠の読み方は?

じっこく‐とうげ〔‐たうげ〕【十国峠】 静岡県東部、熱海市と函南(かんなみ)町との境にある峠。
伊豆・相模・駿河・遠江・甲斐・武蔵・常陸・安房・上総・下総の十か国を望むことができるところからいう。


❷文学書、寺田寅彦、泉鏡花では「十国峠(じっこくとうげ)」 “十国峠”の読み方と例文|ふりがな文庫 (furigana.info)


❸登山のサイト、ヤマレコでは十国峠(じっこくとうげ)   十国峠-ヤマレコ


❹国土地理院の「地名集日本」(2007)では「1124 十国峠 じっこくとうげ pass 」 000238259.pdf (gsi.go.jp)
   日金山はなし
熱海市は「じゅっこくとうげ」としていると思うので、「地名集日本」は市町村の決めた名前に則ってはいないようです。地理院が独自に決めた名称です。



(3)「じゅうこくとうげ」と表記


 今のところ見つけることができません。




では、「十」の表記について



・漢和辞典

【十】《常用音訓》ジュウ, ジッ, とお, と  《音読み》ジュウ(ジフ)[呉], ジッ[慣], シュウ(シフ)[漢](入)緝


・広辞苑

じっ【十】

「十」の字音ジフが促音に転じたもの。
じゅう【十・拾】ジフ

「十本」「十干」「十手」など促音化するときは、 本来ジッと読むが、ジュッの音も広がっている
じゅっ【十】

「十」の字音ジフが促音に転じたもの。

じっ‐かい【十戒】
じっ‐かい【十界】
じっかい‐ごぐ【十界互具】
じっかい‐ず【十界図】‥ヅ
じっかい‐だいまんだら【十界大曼荼羅】
じっ‐かん【十干】
じっきゃく‐るい【十脚類】
じっきんしょう【十訓抄】‥セウ
じっ‐けつ【十傑】
じっこく‐とうげ【十国峠】‥タウゲ
じっ‐さいし【十才子】
じっ‐さいにち【十斎日】

じゅう‐あく【十悪】ジフ‥
じゅういち‐がつ【十一月】ジフ‥グワツ
じゅうえん【十堰】ジフ‥
じゅう‐おう【十王】ジフワウ
じゅうおう‐きょう【十王経】ジフワウキヤウ
じゅう‐がつ【十月】ジフグワツ
じゅう‐ぎ【十義】ジフ‥
じゅうぎゅうず【十牛図】ジフギウヅ
じゅう‐げん【十玄】ジフ‥
じゅうげん‐えんぎ【十玄縁起】ジフ‥
じゅうげん‐もん【十玄門】ジフ‥
じゅう‐ごう【十号】ジフガウ
じゅうご‐ごそう【十語五草】ジフ‥サウ
じゅうご‐だいじ【十五大寺】ジフ‥
じゅっ‐かい【十戒】
 
*じっ‐かい【十戒】もあります




■当方の調査では次のふたつも「じゅっ」と読むサイトが有ります。

「十干十二支」じゅっかんじゅうにし
十干十二支(じゅっかんじゅうにし)とは - コトバンク


「十進法」 じゅっしんほう
大辞林
十進法 - Wikipedia
そく‐おん【促音】 読み方:そくおん

日本語の音節の一。語中にあって、カ・サ・タ・パの各行の頭子音と同じ閉鎖音または摩擦音の調音の態勢で1音節をなすもの。「こっか(国家)」「いっさつ(一冊)」「カット」「あっぱれ」などのように、「つ」「ツ」を小さく書いて表す。つまる音。促声。外来語や方言音では、例外的に、ガ・ザ・ダ・バの各行やハ行音などの前に現れることもある。また、感動詞や擬声語などでは、「あっ」「きゃっ」のように、語末に現れることもある。→直音






以上から、「十」を「じゅっ」と読むのはとても少なく、それも「十戒」「十干」「十進法」も「じっかい」「じっかん」「じっしんほう」と併用する読み方になります。

そのため、「十国峠」を「じゅっこくとうげ」と読む例は上記した熱海町、函南町関連のHP以外では見つかりません。
後で掲載する明治時代からの文献では、何故か振り仮名がある史料でも「十國峠(こくとうげ)」と「十」の読み方の記載がない。または、十國峠(じつこくたうげ)、十国峠(じっこくとうげ)等の読み方で、「じゅっこくとうげ」の振り仮名は有りません。熱海市の図書館で、熱海市が作った史料を探せば出てくるかもしれません。

これらの検討から以下のように推察しました

十国峠」を「じゅうこくとうげ」とは発音しにくいため、促音化された。促音化には「じっこくとうげ」と「じゅっこくとうげ」があるが、辞書、百科事典、文学書では「じっこくとうげ」と表記された。しかし、十国峠のある熱海市、函南町では「じゅっこくとうげ」と表記された。とても珍しい表記、読み方であるが、地元で昔からそのように発音されていた。その理由は不明です。

十国峠が位置する熱海市、函南町以外では、「じゅっこくとくげ」ではなく「じっこくとうげ」と記載するとても珍しい山名と言えます。


当サイトでは十国峠管理元である熱海市の表記を尊重して「じゅっこくとうげ」を採用、そして他の多くの箇所で使われている「じっこくとうげ」も併用した。








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