「ふるいけやかわずとびこむみずのおと」の表記 151












1 「ふるいけやかわずとびこむみずのおと」令和の表記



中学校三年生の国語の授業です。奈帆先生が「ふるいけやかわずとびこむみずのおとの作者と表記の問題を出しています。











七菜さんは、答を黒板に書きました。










問題1の「ふるいけやかわずとびこむみずのおと」の作者は「松尾芭蕉」で正解です。



松尾 芭蕉

松尾 芭蕉(まつお ばしょう、寛永21年(正保元年)(1644年) - 元禄7年(1694年))は、江戸時代前期の俳諧師。俳号としては初め宗房(そうぼう)を称し、次いで桃青(とうせい)、芭蕉(はせを)と改めた。北村季吟門下。

芭蕉は、和歌の余興の言捨ての滑稽から始まり、滑稽や諧謔を主としていた俳諧を、蕉風と呼ばれる芸術性の極めて高い句風として確立し、後世では俳聖として世界的にも知られる、日本史上最高の俳諧師の一人である。但し芭蕉自身は発句(俳句)より俳諧(連句)を好んだ。  松尾芭蕉 - Wikipedia





問題2の「ふるいけやかわずとびこむみずのおと」を「漢字、仮名で表記しなさい」。

七菜さんの答「古池や 蛙飛び込む 水の音」は中学三年の教科書に書いてある表記と同じですので正解です。
中学校国語科(平成22年度)第3学年国語科学習指導案参照


しかし、実際の中学の授業ではこのような「ふるいけやかわずとびこむみずのおと」を「漢字、仮名で表記しなさい」という問題を出しません。芭蕉がこの句をどのように表記したか、現在どのように表記するのが正しいのかはどこにも書いていません


夏井いつき先生が、俳句の表記の難しさについて以下のように解説しています。これらと「漢字と平仮名」の問題も加えて、「ふるいけやかわずとびこむみずのおと」の表記を探索します。


俳句の表記

なぜ表記の問題が大変悩ましいのかというと、この二つの要素が絡みあうからなのです。つまり、俳句を作る人たちは以下の四つの表記のどれかを選んでいるということなのです。

A 文語で歴史的仮名遣い
B 文語で現代仮名遣い
C 口語で歴史的仮名遣い
D 口語で現代仮名遣い


「文語」は、
【文章を書くときに用いられる、日常の話し言葉とは異なった独自の言葉。特に、平安時代語を基礎にして独特の発達をとげた書き言葉をいう】と辞書には書いてありますな。

対する「口語」は、【明治以降の話し言葉と、それをもとにした書き言葉とを合わせていう。※明治以前の言葉についても、それぞれの時代の話し言葉ならびにそれをもとにした書き言葉を口語ということがある】と、丁寧な但し書きまで附されております。
要は、平安時代を軸とする書き言葉と、明治時代以降を軸とする話し言葉ということです。


「歴史的仮名遣い」は、
【語を仮名で表記する際の方式の一つ。典拠を過去の文献に求める仮名遣い。ふつう、主に平安中期以前の万葉仮名の文献に基準をおいた契沖の「和字正濫鈔」の方式によるものをいう。明治以降、「現代仮名遣い(昭和二一年内閣告示)」が公布されるまでは、これが公的なものとなっていた。旧仮名遣い。】と辞書には解説してあります。

対する「現代仮名遣い」とは、【現在、一般に用いられている仮名遣い。昭和21年(1946)11月16日付けの内閣告示によって急速に普及し、同61年7月1日付けで改定されたが、内容的に大きな変化はなかった。主として現代語の発音に基づいて書き方を定めているが、助詞「は」「へ」「を」をもとのまま用いるなど、一部に歴史的仮名遣いによる書き方を残している。新仮名遣い。】ということになるわけです。


  表記の話 その2・・というか、その0? | 夏井いつきの100年俳句日記より引用





大野山の柚子胡椒に胡椒が入っていない- 8トウガラシの名称唐芥子・・・唐辛子」で芭蕉の「青くても有るべきものを唐辛子」の表記が「俳諧深川集」の刊行された版により異なることに驚き、 芭蕉の最も有名な句「ふるいけやかわずとびこむみずのおと」の表記を探索しました。

探索して、更に驚きました。この句の
表記は下図のように時間と共にいろいろな表記に変化していきます。その過程で、芭蕉門人の仙化と山本荷兮、与謝蕪村、長谷川雪旦、幸田露伴、正岡子規、小宮豊隆などが登場します。探索中に興味倍増し、原稿が長くなり、独立して掲載しました。